異常者の愛1巻
ネタバレ感想
作・千田大輔
「異常者の愛」1巻。
女子小学生が起こした殺人事件は、どこまで尾を引いてしまうのか・・・
異常者の愛
一之瀬一弥(いちのせ かずみ)。小学5年生。
二海二美香(にいみ ふみか)。小学5年生。
カズミとフミカは幼馴染みで、彼はフミカが好きだった。
それを隠さず、一緒に帰ろうと毎日のように誘い、彼女も邪険にしながら満更じゃなく一緒に帰っていた。
一緒に帰る約束をした日の放課後。
カズミは廊下で一人の女子とぶつかってしまった。
三堂三姫(みどう みき)。小学5年生。
クラスでもあまり目立たない女の子だった。
委員会用の荷物をいっぱい抱えていた彼女を手伝って初めて喋ると、意外と明るいやつなんだなとカズミは思った。
その次の日も、フミカと帰る約束をしていたけれど、その前にミドウに呼び出されていたので会いに行った。
実は私達が話したのは昨日が初めてじゃないんだよ、と話し出すミドウ。
その時がきっかけで好きになりました。
そう彼女に告白されるが、カズミはフミカが好きだからと断った。
すると彼女は、
「もしフミカちゃんがいなかったら、好きになってくれてたかな?」
と訊いてきた。
彼は少しまずいなと思いながらも、もしかしたらそうなってたかも、と希望を持たせるようなことを言ってしまった。
「・・・でも、ごめん」
と念のために添えたけれど、もう彼女はフミカがいない場合の可能性だけを考え
「ならよかった・・・」
と呟いていた。
カズミは待たせていたフミカを迎えに教室に戻ると、フミカが血塗れで倒れていて、その前に血で濡れたカッターを握りしめ、返り血を浴びたミドウが立っていた。
フミカはまだ意識があって、カズミが来たことに気付いて目線を彼の方に向けた。
カズミは訳が分からず「は?」としか言葉が出て来ない。
ミドウは嬉しそうに喋り出した。
「どうかな・・・一之瀬くん。これで付き合ってくれる?」
彼好みの女の子にイメチェンしたような、屈託ない笑顔を見せるミドウ。
「は?」
まだそれしか言葉が出て来ない彼に、
「一之瀬くんが言ったんだよ!もし・・・フミカちゃんがいなかったら・・・って」
その時、警備員が通りかかって、ミドウが腕を引かれて連れて行かれた。
ミドウは連れて行かれる直前に
「私が先だったんだよ。カズミ」
そう言い残した。
カズミは振り返って倒れているフミカを見た。
しかし、彼女は彼を見つめたまま動かなくなっていた。
6年後。
高校2年生になったカズミは、美術部に入って、絵とも言えないような何かを描き殴ってストレスを発散させる毎日を送っていた。
そんな彼の唯一の友達は、五条五樹という少しバカな男子一人だけだった。
そして、なぜかカズミを一途に想い続けている四谷四乃という同級生が、足繁く美術室に顔を出して、隙あらば彼に告白していた。
彼は自分が幸せになる資格なんてないと思い、何度も告白を断っていたが、ついに根負けして一度だけデートをすることになった。
次の日曜日。
少し早めに待ち合わせ場所に着いたカズミは、ふと横断歩道を挟んだ向こう側に、ミドウが無邪気な笑顔で信号待ちしているのが見えた。
しかし、トラックが通り過ぎて視界を遮った直後、そこにミドウの姿はなかった。
嫌な錯覚を見た。
そう思おうとした時、四谷がやってきた。
私服の彼女を見て、やっぱり女の子なんだなあと感想を漏らすと、思った以上に彼女をドギマギさせてしまう。
その後は普通にデートを楽しんだ。
でもそれが彼を罪悪感で押し潰そうとして、やはり彼女の告白を受け入れる気にはなれなかった。
害悪愛とミドウ再び
次の日、四谷は学校を休んだ。
すると、なぜか高校生にもなってプリントを届けるよう担任に頼まれて、カズミは仕方なく彼女の家を訪れた。
彼女の母親は娘からカズミの話を聞かされていたらしく、母親は強引に娘の部屋に押しこんで、二人きりの状況を作ってあげた。
四谷は風邪でパジャマ姿のままだったが、彼が来てくれたことで笑顔を見せる。
顔を合わせるのは気まずいと思っていたのは彼だけで、もう何度もフラれている彼女は、幸か不幸かフラれ慣れていて、フラれたデートの翌日でもケロっとしていた。
四谷はなぜカズミを好きになったのか、理由を話し、何か問題を抱えてるなら私の問題にもさせてよと慰めた。
その優しさについに彼はほだされ、いつの間にか四谷が大切な人になっていたことに気がついた。
そして彼は、小学校の時に経験した事件を彼女に打ち明けたのだった。
それから二人は、今までより親密度が上がったように傍からははっきり見えた。
五条にもケジメはしっかりつけろよと言われた日、カズミは一緒に帰ろうと誘って告白の返事を改めてするつもりだった。
しかし、彼女の下駄箱の中に切り刻まれた兎の死体が入っていて、彼女はショックで気絶してしまうのだった。
もしかして、あの時見たのは本当にミドウだったのかも知れない。
そうじゃないとしても、四谷に何か敵意が向けられているのは確かなので、カズミは彼女を今度こそ守らなければならないと思った。
そして保健室に運ばれて落ち着いた頃を見計らい、
「よかったら付き合って欲しい」
と告白し、やっと彼氏彼女になれた二人だった。
だが、デリカシーが足りなかった。
四谷の両親にも報告するため、カズミが鞄の中からスマホを取ってあげようとすると、中から血塗れのカッターが出てきた。
「知らない・・私のじゃない」
そう否定する彼女を、四谷はすぐに信じた。
開けたらすぐ見える位置に置いてあるなんて、見つけて疑って下さいと言っている様なものだ。つまり、誰かが四谷の自作自演にしようと企んだに違いなかった。
晴れて付き合うことになった二人は、翌日の休日にデートすることにした。
可愛い下着を念入りに選んだ四谷は、嬉しい気持ちを隠し切れずに待ち合わせ場所に急いだ。
しかし、向かっている途中の曲がり角で、女の子とぶつかってしまうのだった。
目が覚めると、薄暗い部屋の中にいて、椅子に座らされて縛りつけられていた。
程なくして入ってきたのは、あの時ぶつかった女の子で
「初めまして、三堂三姫です。そしてー、四谷さんはカズミを呼び出すための人質なのです」
と言った。
「四谷さんのスマホで、カズミに遅れるってメールしといたよ!心配させちゃ悪いもんね!
それじゃ・・・始めよっか」
ミドウはカッターで四谷の服を切り裂き、胸元を露にして可愛い下着が見えるようにした。
ブラを引っ張って放してからかい、その可愛い下着を見せるつもりでいたこと、あわよくばエッチなことも期待していたと無理矢理喋らせる。
脅されるまま喋る四谷を見て馬鹿笑いし、四谷がいやらしいことを考えていた証拠として、録音したばかりの音声を聞かせて楽しむ。
そして、下着だけを残して全部切り刻んだ後、カズミに電話をかけるのだった。
四谷の電話からミドウに呼び出され、急いであの場所に走った。
6年ぶりに再会したミドウは、実は中学3年以降のカズミをずっと見ていたと打ち明けた。
夜遅くまで部屋に電気がついているのも、高校の休み時間では美術室で絵を描き殴っているのも、この前のデートで少し早めに着いたことも。
「もう少し、遠くから見守ろうと思ってたんだけど、あろうことか四谷さんと付き合っちゃうんだもん。
そしたら放っておけないじゃん。だって・・・カズミは私の恋人だから!」
自分勝手な理屈を捲くし立てる異常者相手に話が通じないと思ったカズミは、自分で四谷を探すと吐き捨てて、教室を出ようとした。
するとミドウは
「私だってか弱い女の子なのに、本当に私一人で四谷さんをここまで運べたと思う?」
そう言ってどこかに電話をかけた。
その直後、着信音が真後ろから聴こえてきた。
自分で自分のスマホにかけたと気付いた時には、もう遅かった。
ミドウは素早く机と彼の小指を繋げて自由を奪った。
ミドウは動けない彼相手に愛を語り出し、自分の初めてを捧げるために身勝手な誘惑を始めた。
抵抗しようともがく彼を落ち着かせるために、ミドウはあるものを用意していた。
それは、二海家から盗んできたフミカの骨だった。
感想
異常者の愛1巻でした。
面白度☆8 異常度☆9
どうしてミドウがこんなにイカれてしまったのか、原因が気になります。
絵は可愛らしい感じですが、それが逆に異常さをかき立てているような気がしますね。名前に数字を入れているのはめんどくさいからなのか、何か意味があるのか分かりませんが、このストーリーからして意味はなさそうです。
巻末の描き下ろしもなかなかヘビーでした。