喰猟教室1巻ネタバレ感想
ホラーの名手、ウェルザードを原作に迎えた今作。
とある高校の一クラスで、突然猟奇殺人事件が立て続けに起こった。
身の毛もよだつその事件は、とても人間業には見えなかった・・・
あらすじ
主人公の浦谷翔は、コンビニ帰りの夜道に公園でいちゃついてるカップルを見かけた。
暗がりで何をしているかパッと見は分からなかったが、喘ぎ声のような感じだったので、リア充に対する憎しみを覚えて心の中で文句を垂れた。
しかし、よく聞くと声は男のものだった。
一方的な喧嘩かも知れないと思った直後、月明かりが照らし出したのは、化物が人間を捕食している光景だった。
服や靴ごと全てを飲み込んだ人間のような化物は、浦谷に気付いて彼の目の前に立ちはだかった。
そこで彼は気絶してしまうのだった。
始まりの朝
翔は自宅の自分の部屋のベッドの上で目を覚ました。
姉の雅が言うには、同じ道場に通う陽子が道端に倒れているところに通りかかって運んでくれたらしかった。
あれはどうしても夢だとは思えず、しかしなぜ喰われなかったのか考えても分かる訳がないので、とにかく忘れようと思った。
登校途中の駅で幼馴染みの千奈美に会って、いつもより顔色が悪いと指摘されたが、早く忘れたかったので昨夜のことは話さなかった。
教室に着くと、いつもと違う妙な雰囲気だった。
千奈美は変な匂いがすると言うが、翔には分からなかった。
それよりも、黒板に
「このクラスに一人、人を喰らう者がいる」
と書かれた張り紙がしてあった。
誰も本気にしていなかったが、翔だけは瞬時に昨夜のことが思い出されて、冗談では済ませられないほど現実的な言葉だった。
それに、よく思い出せば、あの化物はこの学校の制服を着ていたように見えた。
その直後、陽子が遅刻ギリギリで駆け込んできた。
パンツが見えるのも構わず、翔の前でスカートをヒラヒラさせる彼女は彼より背が高い、男勝りな女子だった。
翔に話す口ぶりからして、彼女は化物を目撃してはいないらしかった。
担任の斉藤がやってきて、出席を取り始めた。
次々と名前を呼ばれて生徒達は返事をしていくが、玉置恵理は呼ばれても返事を返さなかった。
斉藤は穏やかに注意して、小さくてもいいから返事をしろと言って出席簿で軽く頭を叩いた。
その直後、玉置の頭がゴロリと床に落ちた。
教室に悲鳴が響き渡り、多くの生徒は廊下に飛び出した。
これが彼らを恐怖に陥れる、第一の事件の始まりだった。
玉置は脳をくり抜かれ、中に棒を突き刺され、身体と頭を切り離された状態で椅子に座らされていた。
翔はこの異常事態に遭遇したせいで、昨夜見た事を陽子と千奈美に打ち明けることができ、陽子は彼の話を信じてくれた。
警察が来て別の教室に集められた時には、既に半分が帰宅していたが、残った生徒だけで気付けた事を挙げていくことにした。
そもそも、死んでいる人間が座っていてなぜ気付けなかったのか?
玉置はいつからあそこに座っていたのか?
早めに登校した加藤王牙によると、彼が来た時には既に玉置は座っていて、他に真野と佐竹の二人もいたらしい。
しかし、動機も何も分からない状態で、無闇に疑うのは避けたほうが良さそうだった。
そうこうしているうちに、出席番号順で事情聴取が始まった。
翔から別室に呼ばれて向かう途中の廊下で、彼はまた信じたくないものを見てしまった。
窓から見える屋上の避雷針。
そこにクラスメイトの志村が突き刺さり、口から避雷針の先端を覗かせていた。
翔は皆のところに戻り、また一人殺されたことを伝えた。
彼らは怖い物見たさの好奇心で廊下に飛び出し、再び悲鳴が学校中に響いた。
志村もまた玉置と同じく、目立たない大人しい生徒で、誰かから恨みを買うような人物ではなかった。
しかも、避雷針が立っている場所は、屋上に上がる階段の雨避け用の上で3mほど上がらなければならない。そして専用のハシゴや階段もなく、避雷針に突き刺すとなれば、さらに数mジャンプでもしない限り不可能だった。
そこで翔は、クラスの全員に昨夜見たものを伝えた。
オカルトマニアの佐山が
「ゾンビよ!その人喰いゾンビが犯人よ」
と騒ぎ出した。
翔もそうに違いないと思っていたが、玉置と志村は見せつけるように殺されていたのに対し、昨夜は証拠を残さず丸ごと食べられていたのが気になった。
すると志村の後ろの席の小野が、「玉置の件でパニックになる直前まで、確かに志村は座っていた」と証言した。
つまり、貼紙を信じ、志村を運んで殺す時間を考えると、今この場にいないクラスメイトの中に犯人がいる可能性が高かった。
結局、人並外れた猟奇的過ぎる犯行に警察は何も掴めず、彼らは帰宅を許された。
翔・陽子・千奈美の3人は、不安に駆られて一番近い翔の家で一緒にいることにした。
帰ってすぐ、学級委員の江川が作ったライングループからの招待メッセージが届いた。
学校に残った半数のメンバーだけのグループの情報交換用だったが、空気の読めない彼は、殺された玉置と志村にも招待メッセを送り、皆の顰蹙を買っていた。
3人が中途半端な時間の昼食を摂っていると、次々と送信されるメッセージの中に、
「志村海斗が入室しました」
というところで目が釘付けになった。
そしてその志村海斗の携帯を操作している誰かは「Z」なる人物を招待した。
Zは最初のメッセージで
「ここにいる全員喰われる」と書いて送信してきた。
慌てて殆どの者が退出していく中、翔を含めた数人はまだグループを抜けずに残った。
その中の、怖い物知らずの佐山と小野がZに質問し始めた。
Zは質問には答えず、
「毎日、一人喰われる」と送信してから退出していった。
千奈美は訳が分からなさ過ぎる恐怖に耐えかね、翔の家を飛び出してしまった。
自分より強い陽子が後を追ってくれるが、翔の不安は消えなかった。
夜になっても、グループのやり取りは続いていた。
主に佐山が色々意見を出していて、犯人を特定して殺す、なんて物騒なことを言い出していた。
翔が特定するところだけ賛成のメッセを送ると、小野から直接電話がかかってきた。
「ゾンビを見つけ出してどうするの?」
と聞かれるが、翔もその先は考えていなかったので、逆に同じ質問を返すと、彼女はじれったさに苛立って、今からそっちに行くから駅まで迎えに来て、と言い出した。
「親と仲悪くてさ・・・ぶっちゃけ家にいたくないし・・・」
そう言って、一方的に電話を切ってしまった。
ろくに話したこともなかったが、外は危険なので全速力で自転車を漕いで駅に向かった。
駅に着くと本当に待っていたので、
「危機感なさ過ぎ」と、息を切らせながら注意した。
すると小野は「イヤなら無視すれば良かったのに」と、言い返してくる。
翔は思ったまま「こんな時に家いれねえなんて、ほっとけないだろ」と答えた。
その言葉に小野が嬉しさを感じたことを、翔は気付かなかった。
陽子や千奈美とも違うタイプの女子に、翔は変にペースを乱される。
ただ小野はギャルな見た目に反して、しっかりこの事件のことを考えていた。
貼紙をした奴は、ゾンビの存在を知っていた。貼紙をした後で二人が殺されたから、皆ゾンビを信じた。
貼紙がなければゾンビの存在なんて誰も信じなかったはずだから、人喰いゾンビがわざわざ自分の存在を知られるようなことをする理由がない。
つまり、殺人犯と翔が見たゾンビは別人のはず。
小野はそこまで推理していたが、そこから先は情報がなさ過ぎてどうしようもなかった。
そんな話をしながら翔の家に向かっている途中で、頭に紙袋を被って彼らと同じ学校の制服を着た何者かが二人の前に現れた。
「二人を殺したのは僕じゃない。
誰かが僕の仕業に仕立てようとしてる。
その誰かを浦谷くんに捜して欲しい」
そう話しかけてきた。
小野は、あんたがゾンビって証拠は!?と訊くと、紙袋を少し持ち上げて、翔の記憶に残っているあの化物の鋭い歯を見せてきた。
「二つだけ信じて欲しい。
僕はあのクラスが好きで、クラスメイトを食べようとは思っていない。
だから事件の犯人を一緒に探さないか?
もちろん他言無用だし、この話が犯人に知られたら君たちに危害が及ぶかも知れないよ?
玉置さんみたいに脳味噌食われたりね?」
二人に拒否権は一切なかった。
満足したゾンビは嬉しそうに歪む目を見せて、一瞬で目の前から消えた。
その日の夜。
夢か現実か、翔が寝ているところに小野が夜這いを仕掛け、突然の告白をしてきた。
自分を突然頼ってきた同級生からの誘惑に負けて、彼は小野の唇に吸いついた。
彼女がリードしようと彼の上に覆い被さった時、笑った口元から覗いた歯は、あのゾンビと同じように鋭く尖っていた。
感想
喰猟教室1巻でした。
面白度☆8 ミステリ度☆7
真犯人とゾンビは誰なのか?
グロ系のサスペンスホラーですが、伏線がありつつのミステリ要素が強くなれば、もっとおもしろくなりそうです。
絵もうまいし、デスゲームとはちょっと違う内容なので、割と新鮮味もありました。
千奈美はおそらく、玉置の死臭に気付いたんでしょうが、それは元から知っていたという可能性を疑ってしまいたくなります。
小野の夜這いは現実なのか夢なのか判然としませんが、ゾンビが一人とは限りませんし・・・