翔は皆のところに戻り、また一人殺されたことを伝えた。

彼らは怖い物見たさの好奇心で廊下に飛び出し、再び悲鳴が学校中に響いた。

 

志村もまた玉置と同じく、目立たない大人しい生徒で、誰かから恨みを買うような人物ではなかった。

 

しかも、避雷針が立っている場所は、屋上に上がる階段の雨避け用の上で3mほど上がらなければならない。そして専用のハシゴや階段もなく、避雷針に突き刺すとなれば、さらに数mジャンプでもしない限り不可能だった。

 

そこで翔は、クラスの全員に昨夜見たものを伝えた。

 

オカルトマニアの佐山が

ゾンビよ!その人喰いゾンビが犯人よ

と騒ぎ出した。

 

翔もそうに違いないと思っていたが、玉置と志村は見せつけるように殺されていたのに対し、昨夜は証拠を残さず丸ごと食べられていたのが気になった。

 

すると志村の後ろの席の小野が、「玉置の件でパニックになる直前まで、確かに志村は座っていた」と証言した。

 

つまり、貼紙を信じ、志村を運んで殺す時間を考えると、今この場にいないクラスメイトの中に犯人がいる可能性が高かった。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

 

結局、人並外れた猟奇的過ぎる犯行に警察は何も掴めず、彼らは帰宅を許された。

 

翔・陽子・千奈美の3人は、不安に駆られて一番近い翔の家で一緒にいることにした。

 

帰ってすぐ、学級委員の江川が作ったライングループからの招待メッセージが届いた。

 

学校に残った半数のメンバーだけのグループの情報交換用だったが、空気の読めない彼は、殺された玉置と志村にも招待メッセを送り、皆の顰蹙を買っていた。

 

 

3人が中途半端な時間の昼食を摂っていると、次々と送信されるメッセージの中に、

志村海斗が入室しました

というところで目が釘付けになった。

 

そしてその志村海斗の携帯を操作している誰かは「Z」なる人物を招待した。

 

Zは最初のメッセージで

「ここにいる全員喰われる」と書いて送信してきた。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

慌てて殆どの者が退出していく中、翔を含めた数人はまだグループを抜けずに残った。

 

その中の、怖い物知らずの佐山と小野がZに質問し始めた。

 

Zは質問には答えず、

「毎日、一人喰われる」と送信してから退出していった。

 

 

千奈美は訳が分からなさ過ぎる恐怖に耐えかね、翔の家を飛び出してしまった。

 

自分より強い陽子が後を追ってくれるが、翔の不安は消えなかった。

 

 

夜になっても、グループのやり取りは続いていた。

主に佐山が色々意見を出していて、犯人を特定して殺す、なんて物騒なことを言い出していた。

 

翔が特定するところだけ賛成のメッセを送ると、小野から直接電話がかかってきた。

 

「ゾンビを見つけ出してどうするの?」

と聞かれるが、翔もその先は考えていなかったので、逆に同じ質問を返すと、彼女はじれったさに苛立って、今からそっちに行くから駅まで迎えに来て、と言い出した。

 

「親と仲悪くてさ・・・ぶっちゃけ家にいたくないし・・・」

 

そう言って、一方的に電話を切ってしまった。

 

ろくに話したこともなかったが、外は危険なので全速力で自転車を漕いで駅に向かった。

 

 

駅に着くと本当に待っていたので、

「危機感なさ過ぎ」と、息を切らせながら注意した。

 

すると小野は「イヤなら無視すれば良かったのに」と、言い返してくる。

 

翔は思ったまま「こんな時に家いれねえなんて、ほっとけないだろ」と答えた。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

その言葉に小野が嬉しさを感じたことを、翔は気付かなかった。

 

 

陽子や千奈美とも違うタイプの女子に、翔は変にペースを乱される。

 

ただ小野はギャルな見た目に反して、しっかりこの事件のことを考えていた。

 

貼紙をした奴は、ゾンビの存在を知っていた。貼紙をした後で二人が殺されたから、皆ゾンビを信じた。

貼紙がなければゾンビの存在なんて誰も信じなかったはずだから、人喰いゾンビがわざわざ自分の存在を知られるようなことをする理由がない。

つまり、殺人犯と翔が見たゾンビは別人のはず。

 

小野はそこまで推理していたが、そこから先は情報がなさ過ぎてどうしようもなかった。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

 

そんな話をしながら翔の家に向かっている途中で、頭に紙袋を被って彼らと同じ学校の制服を着た何者かが二人の前に現れた。

 

二人を殺したのは僕じゃない。

誰かが僕の仕業に仕立てようとしてる。

その誰かを浦谷くんに捜して欲しい

そう話しかけてきた。

 

小野は、あんたがゾンビって証拠は!?と訊くと、紙袋を少し持ち上げて、翔の記憶に残っているあの化物の鋭い歯を見せてきた。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

 

「二つだけ信じて欲しい。

僕はあのクラスが好きで、クラスメイトを食べようとは思っていない。

だから事件の犯人を一緒に探さないか?

もちろん他言無用だし、この話が犯人に知られたら君たちに危害が及ぶかも知れないよ?

玉置さんみたいに脳味噌食われたりね?」

 

二人に拒否権は一切なかった。

満足したゾンビは嬉しそうに歪む目を見せて、一瞬で目の前から消えた。

 

 

その日の夜。

夢か現実か、翔が寝ているところに小野が夜這いを仕掛け、突然の告白をしてきた。

著者名:栗山廉士 引用元:喰猟教室1巻

 

 

自分を突然頼ってきた同級生からの誘惑に負けて、彼は小野の唇に吸いついた。

 

彼女がリードしようと彼の上に覆い被さった時、笑った口元から覗いた歯は、あのゾンビと同じように鋭く尖っていた。

 

 

感想

喰猟教室1巻でした。
面白度☆8 ミステリ度☆7

真犯人とゾンビは誰なのか?

グロ系のサスペンスホラーですが、伏線がありつつのミステリ要素が強くなれば、もっとおもしろくなりそうです。

絵もうまいし、デスゲームとはちょっと違う内容なので、割と新鮮味もありました。

千奈美はおそらく、玉置の死臭に気付いたんでしょうが、それは元から知っていたという可能性を疑ってしまいたくなります。

小野の夜這いは現実なのか夢なのか判然としませんが、ゾンビが一人とは限りませんし・・・