モンキーピーク3巻ネタバレ感想
我が身可愛さに氷室が密告したのは早乙女だった。
屈強な安斎の独裁体制が始まり出し、小屋の中は血の匂いが充満していく。
そんな仲間割れをあざ笑うかのように、再び猿が現れた。
追放
月の光りが届かない岩陰の向こうに、猿のシルエットが浮かび上がった。
安斎は外にいたメンバーを中に避難させ、入り口に陣取って迎え討つ体勢をとった。
長谷川が2階の戸締りは大丈夫か確認すると、宮田が早乙女とやりましたと答える。
しかし、最早猿の協力者のレッテルを貼られた早乙女の仕事など信用できず、南が誰彼構わずもう一度確認して来いと騒ぎ出す。
仕方なく長谷川が飯塚と人にやらせようとばかりする南を伴って、2階を確認しにいった。
その隙に宮田と岡島が早乙女の拘束を解き、疑心暗鬼に陥ったこの状態では一緒にいられないから、一人で逃げてくれと非情にも思える宣告をする。
早乙女は驚きながらも、彼の優しさを理解し、このままでは殺されかねない氷室も連れていこうとした。
しかし、意識を取り戻した氷室は早乙女が逃げるぞと騒ぎ出した。
早乙女は仕方なく一人で逃げ、追いかけようとする安斎を外にいたメンバー全員で止めた。
小屋の周りをうろついているのは猿のフリをした林で、全て早乙女を安斎の支配体制から逃がすための芝居だった。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
だが、真っ向から敵対されてもなお、安斎は自分が正義だと疑わなかった。
代わる代わる見張りを交代しながら、朝を待つことに変わりはなかった。
早乙女がいなくなり、小屋の中に戻った穏健派メンバーと暴力推進派に、宮田は訊かれるがまま、早乙女がどういう奴でなぜ信用できるのか話し始めた。
早乙女が中学3年の時、盗んだバイクを無免許で二人乗りして、案の定こけて、その時後ろに乗っていた友人を死なせてしまったことがあった。
しかし宮田は、今でも運転していたのが早乙女だとは思っていなかった。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
ただ本人がそう証言しているだけで、せめて死んだ友人の罪を軽くしてやっただけなんじゃないのかと。
そして二人を殺したと話すうちの一人がその友人なのは知っているが、もう一人が誰か宮田も知らなかったが、その次の春に早乙女の父が亡くなったのは聞いていた。
早乙女は喧嘩っぱやいところはあっても、決して自分から手を出した事はなかったし、いじめもしなかったし、ただ仏頂面で損をしているだけだと。
宮田の話を聞いて、彼らの中の早乙女の印象が少し変わったようだが、もう彼は追放された後なのが皮肉だった。
そして、今度は本物の猿がやって来た。
見張りのいる入り口ではなく、裏の窓に回って矢を番えようとしたその時、シーツに覆われた遺体に紛れていた早乙女が襲いかかり、猿が前に射ってきた矢で胸の辺りを突き刺した。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
思いっきり刺して押し込んだはずなのに、それでも猿は走れるほどの状態を保っていた。
裸足の早乙女は追いかけるのにも一苦労で、少し距離を離された隙に、また矢を討たれて直撃させられてしまう。
だが、この時ばかりは強運が舞い降り、歯と手で掴んで止める事ができた。
そして、崖上にいる高低差を利用して飛び掛り、体重を乗せてもう一度矢を突き刺した。
さすがの猿も吹き飛ばされ、彼は猿もろとも転げ落ちていくが、また運が味方して岩に打ちつけられながらもなんとか止まった。
そして、騒ぎを聞きつけた小屋の中のメンバーが崖上からライトを照らすと、まだ平気で動ける猿が早乙女をボコボコにし始めているところだった。
人間離れした怪力とタフさに、彼は敵わないと悟った。
そして、せめて宮田たちを助けるために、猿に組み付いて一緒に崖の下に飛び降りた。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻