蛍火の灯る頃に3巻
ネタバレ感想
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祖母の家から脱出し、魔除けのお守りに守られている民家に逃げ込む事ができた。
一息つけたのも束の間、床下の貯蔵スペースから少女を発見。
全裸で縛られていたものの、生きていた。
地獄少女
目は虚ろで呼びかけにも反応しないが、少女は縛られていた以外、命の別状はないようで、デリカシーなく裸のままの少女に呼びかける幸人を引き剥がし、月と輝美が服を着せて布団に寝かせた。
裸で縛られて監禁されていた以上、ここにいた男たちに性的暴力を受けた可能性が高い。
そのショックのせいなのか、少女は水を口にするが、呆けたような表情のまま、言葉を話そうとはしなかった。
月は布団を押入れから出した時に、一冊のノートを見つけていた。
それはおそらく、ここに避難していたものの記録で、この早坂村が地獄に変わってしまってからの日誌のようなものだった。
おおよそ幸人たちが経験したことと同じ内容だったが、寝込んでいたある者が泥のようなものを吐くようになったという記述だけが、新たな発見だった。
その者の名はミヨコと書かれていた。
試しに少女にミヨコと呼びかけるが反応はなかった。
今度はそのミヨコの看病をしていたらしい、チハルという名前で呼んでみた。
すると少女は僅かにだが反応を示し、目の中に光が戻ったように見えた。
彼らは一先ず少女をチハルと仮定し、ノートに挟まっていた手書きの地図を検めた。
それは民家の位置を表していて、所々に☓印がしてあるのは、おそらくもう食料を手に入れて使い道がなくなった家に違いなかった。
この家に備蓄されている食糧でおよそ10日分。
禍時の間に☓印以外の家から食料を探しに行くのは必須になった。
翌日から幸人と輝也で探索を開始する。
近くに生きた井戸があったのは不幸中の幸いだったが、近場の民家はほとんどが荒らされた後で、食べ物の調達は困難を極めそうだった。
それより、恐ろしい場面に二人は出くわした。
化け物に襲われたのだろうか、骨と血の痕だけになった5,6人の死体が民家の庭に転がっていたのだ。
その中には包丁も落ちていたことから、もしかしたら化け物と戦うつもりで危険な時間帯に外に出た可能性もあったし、人数がチハルが監禁されていた家にいたと思われる数と一致していた。
常雅の看病をしていた輝美は、彼の虚ろな目とチハルの目から同じ気配を感じ取っていた。
開いているのに何も見ていないような、暗く澄んだ目だった。
そして彼は、一切食事を摂ろうとはしなかった。
男二人は死体を見つけたことを話さずに、連日の探索を続けて何とか水や食べ物を持ち帰ることができていた。
しかしある夜。そろそろ寝ようかという頃になった時、誰もいないはずの辺りから物音がするので様子を見に行くと、常雅が大量に缶詰を食い散らかしていた。
そして彼は、食べた量そのままを泥のようなものに変えて吐き出し、またそれをぴちゃぴちゃと舐め始めた。
備蓄の食糧が一気に減り、常雅の容態があの記録と同じようになっていることが、彼らの不安をどんどん煽ってしまう事態になった。
霧の壁に阻まれて、食料を手に入れられない日々が続いた。
じわじわと絶望が近づいてきている状況に輝美の心が折れかけていると、月は彼女を励ます意味でも、常雅とチハルに散歩でもさせようと提案し、気分転換させてあげようとした。
しかし、玄関から出た途端、常雅は何かに取り憑かれたように走り出し、近くの民家に駆け込んだ。
輝美が後を追うと、彼は便器に残っていた排泄物をくちゃくちゃと食べていたのだ。
そして彼女に気付くと奇声をあげ、またどこかに走り去ってしまった。
月と合流し、一先ず家に戻ったが、今度はチハルがいなくなっていた。
禍時が終わるまで15分程。
二人は急いで辺りを探し回り、程なくチハルを見つけられたが、その瞬間、耳をつんざくような悲鳴をあげた。
その悲鳴を聞きつけて幸人と輝也も二人を見つけ、4人でその恐ろしい光景を見た。
全裸の男女6人が、斧や鉈、包丁を手に殺し合っていた。
腕を落とし、胴体を真っ二つにし、頭を斧でかち割っていた。
散々殺し合い、人を捨てた最後の二人がうまい具合に相打ちになって地獄絵図の動きが止まった直後、傍で見ていたチハルが「活きよ」と言葉を発しながら、天に向かって指を上げた。
すると、肉塊になったはずの6人がたちどころに蘇り、幸人たちに襲いかかってきた。
彼らは急いで家に逃げ込んで扉を閉めた。
そこで息を整えながら、常雅が排泄物を食べていたこと、チハルが死者を蘇らせて殺し合いをさせていたことから、この村が間違いなく地獄になったのだと考えた。
糞尿しか口にできない地獄の亡者。
殺生をした人間が落とされる等活地獄は、骨になるまで戦わされ、また獄卒によって蘇させられて戦いを強いられる。
つまりチハルは、その獄卒の役目を担わされている。
そう結論を出している間に、あの6人は家の前でまた殺し合いを始めていた。
今後霧が範囲を広げて逃げ場が狭くなることを考慮し、6人が殺し終わった後のタイミングでチハルをこの家に連れ戻し、二度と復活させないようにして危険を排除しようと決めた。
何度も聞こえる肉を裂く音や骨を砕く音に耐えながら、全員がくたばった瞬間を見計らって外に飛び出し、チハルをシーツで包みこんだ。
そのまま家の中に連れ戻そうとした直後、シーツの中から大木のような腕が飛び出し、幸人を捕らえた。
それは間違いなくチハルの腕で、彼女の顔は鬼に変わっていた。
輝也は恐怖を押し殺して殺し合いに使われていた鉈を拾って、幸人を掴んで放さない腕を叩き切った。
普通にダメージを与えられるようで、痛みに幸人を手放したと同時に腕がみるみる小さくなり、その隙を狙ってもう一度シーツを被せて家の中に押し込もうとした。
まだかろうじて鬼の力を残していたチハルの片腕は暴れ回ったが、完全に建物の中に入ると、ようやく腕も元に戻り、顔も虚ろで物言わぬ状態になった。
突然起きた問題の一つは沈静化したが、いよいよ食料が無くなろうとしていた。
最後の晩餐のしめやかな空気のせいか、彼らはなかなか言えなかった本音を口にし始める。
その時、化け物たちが雨戸を掻き毟って中に侵入しようとしている音が響きだした。
魔除けのお守りに護られているはずのなのにどうしてなのかと混乱するが、さっき、チハルが暴れた時に魔除けが壊れていて、効力を失っているようだった。
屋根が破壊され、正志は最後の力を振り絞って囮になった。
チハルも見上げるような化け物に変わってしまい、4人に牙を向く。
彼らは命からがら逃げ出し、光に包まれた村の公民館を見つけて中になだれ込んだ。
そこには、魔除けのお守りが寄贈品として丁寧に展示されていたのだった。
感想
蛍火の灯る頃に3巻でした。
面白度☆8 地獄度☆9
等活地獄のなんと恐ろしいことか。おそらくチハルに乱暴狼藉を働いたこともあって、彼女が獄卒に任命されたのでしょう。
輝美が着替え中に下腹部を気にしていたのが気になりますが、もしかして身篭っているのか・・・
公民館に着いてからもまだ続きがありますし、鷹野さんも再登場するので、そこからどう展開していくのか要チェックをお勧めします。