決意
一人殺せば一日進める。
進めなければ詩織の手術できる日が永遠に訪れず、日付は変わらないまま容態だけが悪くなってやがて死んでしまう。
期末テストが始まり、変わらず弥生は心配してくれるが、今は人を殺してしまった恐ろしさに頭がいっぱいになっていて、何も考えられなかった。
さらに警察はすぐに真琴に捜査の手を伸ばしてきた。
殺害現場で現金が入った病院の封筒が発見されたのだ。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
脇田の同僚で、その病院に妹が入院している真琴から事情聴取するのは当然の判断だった。
任意の事情聴取ながらも確実に疑われているのは間違いなく、指紋を取らせて欲しいと言われ、彼はどうにか試験期間中を理由にその場を逃げ出した。
だが、その日のうちから家の周囲に見張りがつくようになった。
だから彼は昨日に戻った瞬間に神社に向かい、封筒は燃やし凶気に使った石を隠し、脇田は死んで当然のクズだったとも言い聞かせた。
何か不手際があれば昨日に戻ってやり直せばいい。
真琴は妹を助けるために殺人鬼になる道を選んだ。
毎日一人ずつ殺すプレッシャーを少しでも軽くするため、脇田のように死んだ方がいい人間だけを殺すことに決めた。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
するとさっそく、勉強をまじめに頑張っているクラスの女子の片桐から3人の男子が、テストの問題を受け取っている場面を目撃した。
片桐に事情を訊くと、家庭の事情のストレスでつい万引きをしたとき、偶然あの男子の一人に見つかってしまい、それをネタに脅されているらしかった。
同じく家庭の事情で悩んでいた片桐に同情した彼は、今夜彼女が呼び出されているひとけのない廃倉庫で一人を殺ることにしたが、倉庫が見えてきてもまだ覚悟ができなかった。
しかし、倉庫の中で彼女がやられているのを見てしまった。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
3人は悪びれもせず、失神している彼女を見ながらゲスい言葉を吐き出していた。
二人が引き上げ、万引きを目撃した沢ノ井が川に向かって無防備に放尿している隙を狙い後ろから襲いかかった。
反撃されてしまったが、両目を潰して頭を水の中に沈め明日への糧にした。
だが、初めての故意の殺人を終えた直後、走り去っていく片桐の背中が見えたのだった。
人を殺す意味
7月12日。
学校は沢ノ井が殺された話題で大騒ぎだった。
そんな中、片桐は他の二人に呼び出され、真琴は息を潜めて3人の会話に耳を澄ませた。
男子二人は片桐が殺したんじゃないかと疑っているようだったが、彼女にそんな力があるわけないことも分かっていたし、彼女も目が覚めてすぐ倉庫を出ただけだから、誰も見ていないらしかった。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
そして坊主頭の梶原が、レイプもしてないし倉庫にも行ってないことにすると声を荒げて片桐を脅した。
あの時、一瞬片桐を殺さなければと考えた自分を真琴は恥じた。
だが、父親が酔って暴れて警察の厄介になったことに我慢の限界を超え、さらに沢ノ井のことで警察に事情を訊かれていた梶原を優しそうな両親が迎えに来た。
梶原が鬼畜の顔を隠して「パパ、ママ」などと呼んで涙さえ流すのを見せられ、真琴が膨れあがるのを殺意を止められなかった。
優しい両親。
可愛くて元気な妹。
裕福な家庭。
だが、レイプ犯の鬼畜な梶原。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
真琴はテスト問題を盗ませた件で話があると言って展望台がある公園に呼び出し、今度は一切の躊躇いなく殺し、死体を隠した。
次はもちろんレイプ犯のもう一人、森下だった。
雨の日で全くひとけのない資材置き場に呼び出し、頭をかち割って殺した。
だが、次の日を迎えてようやく、どんなクズでも悲しむ人がいることに気がついた。
森下の母親はずっと詩織の世話をしてくれていた看護師の鈴原さんだった。
彼女はあえて職場では旧姓を名乗って、オンとオフを切り替えていたのだ。
片桐は自分をレイプした男の二人が殺され、一人が行方不明になっていることに明らかに動揺して青ざめていた。
鈴原は息子を殺した奴に復讐してやると激昂していた。
著者名:向浦宏和 引用元:虐殺ハッピーエンド1巻
そんな二人の顔を見せられて人を殺すとどうなるか分かった真琴に、思いもよらぬところから捜査の手が近づいていた。
感想
虐殺ハッピーエンド1巻でした。
面白度☆8 理不尽なループ度☆9
設定ありきでしょうから、デスゲームジャンル並みに伝えたいことがよく分からないですが、徐々に追い詰められていく様や、警察を欺こうとするところを読ませる力がありました。
でも、ループが手術日で終わる保障はないし、そこから先、主人公がどう考えているのか気になりますね。
絵は綺麗で内容にもマッチしていて良かったです。