娘が大事に至らずに喜ぶその様子は、とても無差別殺人をするようには見えなかった。

 

心はしつこく恩を返したいと言う彼を振りきり、まだ吹雪いている外に出た。

 

するとまた別の少女に話しかけられた。

 

その子も由紀のスクラップ記事にあった三島千夏と言う7歳の少女で、病院の倉庫にあった除草剤のパラコートを誤って飲み、中毒でまさに今日死亡することになっていた。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船1巻

 

 

心は彼女を助けるため、ごまかしてパラコートのボトルを盗み出し、千夏の怪しむ目線を振り切って森の中に入り、中身を全て捨てた。

 

 

これで千夏は助かるはずだと思って安心していると、なぜか文吾がその千夏と一緒に歩いている所を目撃してしまうのだった。

 

 

追いかけたが、吹雪に遮られてすぐに見失ってしまった。

 

すると今度は、兄の慎吾を連れた若い頃の母に出会ってしまった。

 

 

こんな吹雪の中で薄着でいる彼は心配され、姉を迎えに行くらしい母についてまた病院に戻ることにした。

 

 

心が知っている姉は顔中凍傷の痕が残っていて、それを運命の呪いだとよく言っていた。

 

しかし、彼が助けたおかげで軽い霜焼け程度で済み、綺麗な顔を失わなかった。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船1巻

 

過去を変えれば未来も変わると知った彼は、千夏も助かるはずだと確信した。

 

 

しかしその直後、外で文語の騒ぐ声が聞こえてきて、彼の傍にはグッタリした千夏がいた。

 

 

倉庫の前に倒れていたのを見つけたと文語は言うが、一緒にどこかへ歩いていくのを見た心は信じられなかった。

 

文吾が署に連絡しているのを聞いていると、千夏が何かを盗んだ男を追いかけているのを文吾が見つけ、彼女を倉庫の前まで送り、彼はそのまま盗難犯人を捜しに出たらしかった。

 

 

文吾は明らかに心がその犯人の風貌と一致しているを分かりながら、まだあくまで娘の恩人として接するのを止めなかった。

 

母も娘の恩人の彼が自分の旧姓と同じ田村だと知るとさらに厚意を抱き、行く宛てのない彼を家に招いてくれた。

 

だがその日の夕食中に、千夏が亡くなったと連絡が入った。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船1巻

 

 

未来はやはり変えられないのか?

そもそも、本当にただの誤飲事故なのか?

文吾の話は本当なのか?

 

何を信じていいのか分からないでいると、心が倉庫で千夏と一緒にいるところと何かを盗み出したのを見た人物が接触してきた。

 

それは、鈴を発見するはずだった新聞配達員の男だった。

 

 

千夏の事件のことで疑いの目を向けてくるが、間に警官の文吾が入ってくれたことで彼は渋々引き下がっていった。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船1巻

 

 

しかし、結局親子で疑い合うことになってしまった。だが今度は母が恩人を疑うなと言って文吾を叱り、妙な事情聴取は有耶無耶のうちに終わった。

 

 

1月10日。

由紀の調べと同じ日に千夏の死因が、やはりパラコートの中毒症状だと判明した。

 

通夜に出かけた母たちの代わりに留守番をしながら、除草剤であるパラコートが一つの家庭に何個もあるとは思えないでいると、自宅と繋がっている駐在所の中から、ダンボールに入ったパラコートのボトルを見つけたのだった。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船1巻

 

 

無差別殺人以外も文吾の仕業なのか?

 

その彼は心を疑っているようにも見える。

 

心は由紀が調べ上げた無差別殺人以前にこの村で起きる事件事故を全部変えてやろうと決意し、無差別殺人が起きる6月までこの村に滞在するため、うまい理由をつけてこの家に住まわせてくれるよう母の了承を得た。

 

 

次に文語の了承を得ようとしたが、彼は心の運転免許証を勝手に漁って見ていた。

 

もちろんそれに印字されていたのは、今から見れば数十年後の未来だった。

 

 

感想

テセウスの船1巻でした。
面白度☆9 ミステリー度☆8

これはおもしろかった。

過去を変えて未来にどこまで影響があるのか考えないのはどうかと思いますが、人の生死がかかっているなら仕方ないのかも知れません。

まだ犯人が誰か分かりませんが、どう考えても最初に出てきた狐面の子供が怪しいです。

なぜなら、犯人らしき人物の語りが所々に挟みこまれているので、それを読めば疑わざるを得なくなります。