異常者の愛2巻
ネタバレ感想
幼馴染みで好きだったフミカを殺されたカズミ。
やがて高校生になった彼は、再び大切に思える女の子ができたが、それを待ち構えたいたかのように殺人犯のミドウが現れ、また凶行に走った。
夢の終わり
四谷は台車に乗せられてきた。
目隠しとヘッドホンを被せられ、大音量で何かを聴かされているようだ。
カズミは声を荒げて怒りを表すが、ミドウが口を手に当てて何をしでかすか分からない表情を見せると、黙るしかなかった。
立たせられた四谷の腹部にはバツ印で切り傷が走っていて、血が滴っている。
ミドウはそこを指先で刺激し、しつけてあげただけだと満面の笑顔を見せる。
猿轡を外し、ヘッドホンの片方を外して口元を近づけ、何か囁いた。
すると四谷は身体をビクッと震わせ、謝罪の言葉とカズミが嫌いだと叫ぶように連呼し始めた。
このカッターで刺し、引き裂いた傷がカズミを好きでいられた時間だとのたまい、自分なら愛を貫いたまま死ねるとミドウはほざいた。
台車の上は失禁でぐしょぐしょに濡れていた。
好きな人は傷つけたくないし、カズミの浮気相手に罰を下せるのは自分だけ。
彼がまだ心折れずにミドウとするのを拒むと、彼女はカッターの刃をチキチキと滑り出させ、彼が止めろと言うのと同時に、四谷の胸の膨らみの上辺りを躊躇なく突き刺した。
皮膚と肉に空いた穴から血が流れ出し、四谷は激痛に叫ぶが、静かにと囁かれれば瞬時に口を閉じた。
彼は諦め、何でも言う事を聞くと言うしかなかった。
一先ず納得したミドウは彼の膝の上に乗り、さっそくキスをした。
股間を触れば素直に大きくなってくれるのに笑みを漏らし、教室の中に引きずり込んだ。
ミドウが服を脱ぎ、自分も脱がされながら、彼は四谷と出会ってから今までの事を思い返していた。
そんなことは知る由もなく、ミドウはちゃんと勃っている彼に跨り、処女膜が破れる痛みも喜びでかき消して、拘束して動けない彼の代わりに自分勝手に腰を振り続けた。
屈辱に彼が顔を歪めていても舌を差し入れ、痛みが和らいで少しずつ気持ちよさを感じられてきたところで、彼の熱い液体が注ぎ込まれるのを感じて、すっかり満足していた。
彼は警察に言って、もう一度ミドウを一般社会から消すつもりだった。
しかし、四谷の卑猥な写真をネタに阻止され、何も悪い事をしていないのにこんな酷い目に遭う境遇とミドウを呪った。
だがあくまでミドウの中では、期待を持たせるように振ったカズミが悪く、フミカより自分の方が先に好きになったのだと知っていた。
ミドウは彼が注ぎ込んだお腹をさすり、股の間から血を滴らせたまま姿を消した。
身体の自由を取り戻したカズミは四谷の拘束を解き、ヘッドホンと目隠しを外した。
彼が上着をかけ、心配して手を伸ばそうとすると、彼女は反射的に振り払った。ヘッドホンでは絶え間なく「一之瀬くんなんか嫌いです」と言わされた彼女の声がリピートされていた。
五年
五年の月日が流れ、カズミは22歳になっていた。
みっちりとバイトを入れて働く合間に、数人のセフレと気ままに会って気ままにセックスをする日々を送っていた。
その日は夜勤明けの年上の女性とホテルで会ってから、最初の職場に向かった。
二つ三つとかけ持ちし、日付が変わる頃になって、あれからずっと付き合いが続いている五条と会って飲み始めていた。
彼にも、四谷が学校に来なくなった理由や、自分が人を遠ざけるようになった理由を一切話していなかった。
ただ人探しをしていることだけは伝えていたので、何かと出会いの場には誘ってもらっていた。
そして後日、興信所からミドウを見つけたと連絡が入った。
それから三日後に直接会いにいく段取りをつけ、またいつものバイト漬けの日々になった。
ミドウを見つけ、もう少しで目的を果たせる嬉しさでいつもよりテンションが上がっていたのが居酒屋の後輩バイトにバレ、久しぶりに彼女とでも会えるんだろうと詮索されてしまう。
そうやって彼の恋バナに首を突っ込む後輩こそ、彼とはセフレの関係でもあった。
恋人か好きな人と会えるみたいに話すから、聞いたこっちもムラムラしてきたなどと特殊な性癖を打ち明けつつ、セフレが何人かいても、誰も好きじゃないカズミとなら、割り切ってできるから彼氏がいても気が楽だと、どんどん打ち明けていく。
そんな風にあっけらかんとした彼女の性欲は旺盛で、仕事終わりにも関わらず二回戦目を誘ってきた。
彼が腰に痛みを感じながらアパートの部屋に帰ると、なぜか鍵が開いていて、中に一人の女がいた。
女が居酒屋のスタッフルームに忍びこんで盗んだ鍵を見せて、ようやく鞄に鍵が入っていないのに気付いた。
女は四谷四乃の妹で四穂と名乗った。
彼は言われるままファミレスに移動して正面に座ると、「ミドウさん、見つかったらしいですね」と切り出してきた。
興信所に極秘で調べてもらっていたことをなぜ知っているのか、彼は思わずテーブルを叩いて立ち上がるほど驚いた。
その動揺する様を見て四穂は震え出し、本当に見つかったんだと言って笑った。
四穂が中学3年の頃に四谷はミドウに襲われ脅され、心身を病んだ。
部屋に引きこもり、泣きはらす日々を送るなか、何度も「一之瀬」くんと呼んでいた。
20歳になって自由に動けるようになった今、四穂はフミカがミドウに殺された事件にカズミが巻き込まれた事を調べ、彼を尾行し、爛れた生活を送っている事を突き止めた。
しかし、姉の口からミドウの名前が出てくる理由が分からず、何かを知っていそうなカズミに接触して来たのだった。
彼はその事実で、もしかして四谷は元気になったのかと思って訊いた。
すると四穂は飲んでいたジュースを彼の頭にぶちまけ、そんなわけないだろうと怒り、四谷がどんな状態か話し出した。
四谷は一人になるのを恐れた。
部屋も風呂も四穂が一緒に入り、トイレの時はドアを開けたまま四穂の姿を見ていないと、パニックに陥るのだった。
そして半年前から、もっと酷い状態になり始めたらしいが、四穂はそこまでで話を終わらせて帰っていった。
彼が何も話さないなら、フェアじゃないという理由だった。
彼はその一部始終は話さずに、高校時代の保健の先生に四谷を覚えているか訊いた。
彼女ともセフレの関係で、妹が会いに来て色々訊き出そうとしてきたことまで話したが、お互いプライベートは詮索しない約束を持ち出されたら、何も言えなくなった。
悩んでいる理由が分からなくても、先生らしく慰めようとする彼女を逆に押し倒し、ベッドの上では可愛い彼女を見て、束の間、全てを忘れようとした。
彼はしばらく遠出する予定を先生に伝え、ミドウを殺す決意を強くして、目的地に向かう新幹線に乗ったが、なぜかそこにまた四穂が現れた。
蘇った怪物
部屋に盗聴器が仕掛けられていたらしく、彼の行動は筒抜けだった。
仕方なく、ミドウが四谷にしたことを話すと、当然巻き込んだ彼に怒りの矛先が向けられた。
彼がミドウを殺して決着をつけるつもりだと言うと落ち着きを取り戻したが、結局、ミドウがいる目的地までついてきた。
興信所の人間に案内されて辿り着いた先は、なんの変哲もない幼稚園で、ミドウはそこで先生として働いていた。
一人を殺し、一人の人生をめちゃくちゃにしておきながら、自分だけまともな人生を送っていることに彼の怒りは再燃し、車を下りた。
子供と手を繋いで門扉の前にいたミドウに声をかけると、「保護者の方ですか?」と返された。
煽られている気がした彼が胸倉を掴んで怒声を浴びせると、子供を守るように手を伸ばし「警察が来ますよ」と言った。
ミドウは目に涙を溜めていて、子供も泣き出してしまう。
それでも彼は性質の悪い演技だと信じて声を荒げるが、そこで警備員に咎められ、本当に警察を呼ばれてしまう。
ミドウは本当に、演技をしているように見えなかった。
警察はすぐに事情を察してくれ、ミドウが「全生活史健忘症」だと教えてくれた。
生活に必要な知識だけが残り、人間関係や経験した出来事は忘れる病気で、ほとんどが精神的な理由で起こるらしかった。
もちろん警察はミドウの犯罪歴を把握しているが、今の彼女しか知らない人のためにも慎重に行動するようにと釘を刺した。
殺人、傷害、脅迫、監禁を忘れ、のうのうと人生を再スタートさせていたミドウ。
だからと言って許せるわけもなく、彼は復讐するつもりだった。
しかし、四谷の家族にとってミドウの記憶喪失は歓迎するところだった。
事件の記憶がないのなら四谷の卑猥な写真をばら撒かれる恐れもなく、このまま知らない所で平穏に過ごしてもらえれば少しは気が楽だし、写真もどうにかして処理できれば怯える必要もなくなる。
しかし彼は納得せず、四谷とフミカのためにも復讐するんだと息巻いた。
すると四穂は、本当の被害者を盾にして自分の怒りを晴らそうとするなと言った。
その場に居合わせただけの目撃者の分際で、これ以上事を荒立てて波風を立てるなと突きつけたのだ。
彼が何も言い返せず黙ってしまった時、そこにミドウが現れた。
記憶を失う前の知り合いに会ったのは初めただと言う彼女は、自分を知るために二人を探していた。
もちろん彼はふざけるなと言い返してやりたかったが、四穂が写真を見つけるためにミドウの家で話すのを条件に受け入れ、彼がついて行くのも許さなかった。
彼は一人でホテルに帰り、四穂の言葉を反芻して、不本意ながらも納得できていた。
翌日、東京に向かう駅に、なぜかミドウも一緒にやって来た。
彼女はあの時のように彼を「カズミ」と呼び、車内でも彼の隣に座り、彼女気取りで甘えた声を出し、四穂を完全に支配化に置いていた。
記憶を完全に取り戻した彼女の中には、反省も後悔もなかったのだ。
感想
異常者の愛2巻でした。
面白度☆7 生温い度☆8
姉の卑猥な写真を人質にされたのは仕方ないとしても、あっさり奴隷化した四穂には拍子抜けです。
図星を指されてあっさり納得したカズミの5年間は何だったんだって感じですし、アホみたいにバイトして金を稼いだのがただの捜査費用だったのなら、それもなんだかなあ。
ミドウの邪知暴虐はどこまでいってしまうのでしょうか。