
荒ぶる季節の乙女どもよ3巻
ネタバレ感想
荒ぶる季節の乙女どもよ3巻のネタバレと感想と画像、漫画を無料で読める方法を紹介。
性で頭がいっぱいになり、混乱を来たし、平静を保てなくなっていた和紗。
泉のあの行為を見てからより一層戸惑い、しかし彼への好意を再確認する。
なのに、彼に性的な目で全く見ていないと言われてしまう。
9話
これっぽっちもしたくない。
その言葉は深く和紗の心を突き刺し、涙を流させた。
思わず部屋を飛び出した和紗は足を踏み外して階段を転げ落ちそうになり、しかし、泉が手を伸ばして一緒に落ちたことでクッションになり事なきを得た。
しかし、近い唇同士。股の間に挟まった彼の足。
それらはお互いに男と女であることを意識させるのに十分な状況だった。
それでも、彼女は逆に冷静さを取り戻して玄関から出て行った。
百々子は塾終わりにカラオケに誘われた。
女子からの誘いだったが、そこにはかつて小学校の同級生で、彼女を狙っていると思われる杉本がいた。
男子は卑猥な歌詞の歌を名曲だと嘯いて歌い、杉本は顔を赤くする彼女を助ける名目で一足早く一緒に抜け出した。
そこで彼から、性的な意味じゃなく、小学生の時に大人っぽくかっこよく見えた彼女に憧れていたのだと伝えられ、それで安心感が芽生え、ついに連絡先の交換をしたのである。
和紗は両親との夕食中も、泉との気持ちの違いに心囚われていた。
放心しているような娘を見た両親はもちろん心配し、父は母の肩に不自然さのかけらもなく手を置いて声をかけてくる。
その親密を通り越して愛し合う二人にしかできない触れ合いは、セックスをしたからこそだと思った和紗は、両親と自分と間に大きな隔たりを感じ、「私の気持ち分かる訳ない」と、反抗期のようなキツい言葉を投げ返したのだった。
自室に駆け戻り、心を静められる本を探していると、ふとニーチェの一冊が目に留まった。
考えないようにするより、性と泉のことが一緒くたになったこの気持ちに言葉をつけることができたなら、きっと新しい感情に出会えるはずだと思った。
曽根崎はレポート50枚を待ち詫びている自分を見ないようにしつつ、やはり天城が早く持ってこないものかと考えて苛立ちと期待を感じていた。
そうして一人黙々とお弁当を口に運んでいると、因縁浅からぬ黒ギャルが一緒に食べようと誘ってきたのだ。
髪型を変え、眼鏡をやめて美少女になったものの、香水の臭いをプンプンさせた性に軽そうな相手と一緒に食べる気は起こらず、彼女は屋上に避難した。
少し強く吹きぬける風にスカートが煽られる。
その背中に声をかけてきたのは、レポート50枚を課した彼だった。
10話
天城は原稿用紙の束を押し付けて足早に屋上から出て行った。
何も言葉を返せないまま、呆然と背中を見送り、弁当箱を置いて呼吸を整え、一枚目を捲る。
拙くどうでもいい文章から始まったが、そう読み進めるまでもなく「曾根崎さんはかわいいです」という、彼以外の男子からかけられたことのない言葉が現れた。
かわいいで埋め尽くされ、ゲシュタルト崩壊を起こしそうなかわいいの連続。
同級生からはブスだなんだと疎まれ続けてきた人生において、初めてかわいいと評してもらえた。
それは一瞬で、今までの辛さを打ち消してくれるようだった。
そして最後に、期待しつつも縁のないものだと遠ざけていた、愛の言葉で締め括られていた。
菅原氏は相変わらず浅田に目の敵にされ、落ちたノートをさも気づかなかったかのように踏まれてしまっていた。
しかし、泉が見ていて踏んでるよと普通に注意してくれたので、相手が慌てて謝ってくるまま、弁償代としてお高めに450円を頂戴した。
泉は放課後に菅原氏を誘い、和紗にこれっぽっちもしたくない発言をして泣かせてしまった事を相談した。
泣かれた後で和紗とのそういうシーンを想像してみたが、やはり違和感は拭えなかった。
そんな正直な感想を聞いた菅原氏は、「和紗が好きになるのも分かる」と口走ってしまったのだ。
和紗が自分の事を好きなど、それこそこれっぽっちも考えていなかった彼は、他人の口から聞かされた衝撃の事実に慌てふためき、もっと落ち着いて話ができる場所に移ろうと、フライドポテトを一気に流し込んだ。
その頃、菅原氏がいない文芸部部室では、川端康成の「眠れる美女」が朗読に適しているかどうかで物議を醸していた。
単なる性的描写か。
純粋な思いを描くが故の必然か。
すると和紗は、親が子に向ける気持ちも、好きな人に触れたいと思う気持ちも、間にあるのはセックスで、全ての愛は突き詰めるとセックスに辿り着くのだと高らかに自論をぶちまけた。
その堂々たる宣言を山岸に笑われて恥ずかしさを思い出し、部室を飛び出した。
それで三々五々解散する中、本郷は山岸と相対し、自分が紡ぐ文章に足りない実体験を得るため、彼の手を自分の胸に誘っていた。
そして駅のホームについた和紗は、今発車しようとしている車内に、泉と菅原氏が仲良さそうに一緒にいるのを目撃し、再び心乱されていた。
11話
和紗に目撃されたなど知る由もなく、泉は和紗の話題を続ける前にペラペラと電車愛を語り出し、意外にも菅原氏が同じ感性で電車という乗り物を好ましく思っている事を知り、興が乗ってさらに熱っぽく語り続ける。
しかし、すぐ次の駅で彼女に手を引かれてホームに連れ出されてしまった。
彼女は車内で見つけた背中を追いかけ、駅を出てすぐの信号前で黒ずくめの男性に声をかけた。
「三枝さん、お久しぶりです」
そう声をかけられた男性は、隣にいる泉が彼氏かどうかを確認しただけで、すぐに雑踏の中に消えて行った。
その反応を見せられた彼女の肩は震えていた。
劇団の活動を嫌々やらされていた彼女が11歳の時、彼は既に有名な演出家だった。
月一の頻度でやって来る彼は彼女を主役に抜擢したが、顔だけと周りから陰口を叩かれやる気もない彼女は稽古をサボった。
しかし彼は幼い少女を叱るでもなくその汚れない足に頬を擦り寄せ、どうしても必要なんだと懇願したのであった。
まさにロリコン。
どれだけ有名になっても電車移動しているのは、世間の子供たちを観察するためだった。
ただ彼は少女性を愛しているだけで子供に手を出すことはなく、彼女が女性に変化しようとしている中学生になっても、演出家と美しい子役でしかなかった。
男が向けてくる性的な視線に嫌でも気づくようになっていた彼女は自分から、私としたくないのかと訊いたことがあった。
そしてそこで、少女性しか愛せず、大人になった君に魅力は感じることはないと打ち明けられた。
その時感じた気持ちが、泉が和紗にぶつけた言葉で泣かせたのと通じるものがあると思い、菅原氏は自分の過去を語ったのだった。
ホームで放心していた和紗は追いついてきた須藤に何を目撃したのかを話した。
自分の気持ちを知っている菅原氏を疑ってはいないが、もし泉とくっつくのが菅原氏なら納得できて諦められるかもと思えた。
顔良し、性格良し、ミステリアスなところは本郷もそうだと橋の上で盛り上がっている二人のすぐ横を、山岸が運転する車の助手席に乗った本郷が通過していた。
二人に見られるかどうかのドキドキを無事乗り切った本郷はしかし、山岸に性の実体験を断られ、どうやって性描写を書いていいか分からずに涙を流していた。
そこで彼は、ある提案をした。
和紗と別れた須藤は、杉本からメッセージが届いているのを見て、やはりワンチャンを狙っている雰囲気がする彼のことを、それでも真剣に考えてみようと思い出していた。
そして初めて異性から好意を向けられた曽根崎は、素直な自分になって、50枚のレポートの愛の言葉の後に返事を書いた。
12話
菅原氏なら納得できる。
そう言った和紗だったが、性と恋を別にして考えられるのが男子だけでなく菅原氏もだったとしたら・・・
利害の一致で泉とWINWIN。そう考えると混乱が最高潮に達してしまっていた。
そんな不安定な様子を見せる娘を心配した両親は息抜きにボーリングに連れ出した。
しかしそれは、お隣家族との合同イベントで、漏れなく泉と顔を合わせることになってしまった。
何も気づいていない両家の両親が盛り上がる中、和紗は彼がボールの穴に指を入れるところを見ただけで性的なものと結びつけて冷静さを欠いていた。
彼も彼で、菅原氏から聞かされた和紗の気持ちに手元を狂わされていた。
それでも、お互いに好きな飲み物が変わっていないことを知ったり、お互いの両親が楽しく遊んでいるのを見て、少し昔の感覚を取り戻せそうだった。
だが、彼が菅原氏のことを「きれい」とかではなく「変な奴」と評したのが、ある意味特別に聞こえてしまうのだった。
杉本からのデートの誘いに乗った須藤は、さっそく彼に違和感を感じていた。
レストランで頼んだのは、彼が1600円分で、彼女は1400円分の品。
すると、奢らせてと言っておきながら1000円を徴収し、実質200円多く払っただけなのに異常なまでの恩着せがましさに戸惑わずにはいられなかった。
さらに話の流れで父親がいないことを話すと、なぜか嬉しそうな顔を返された。
ドッと疲れを感じた帰りの電車内で、さっそく彼からのメッセージが届いた。
それは全く持って都合よく解釈したとんちんかんな内容で、自然と脈が消えたのである。
次の日の休み時間の校舎の廊下で、山岸は生徒に授業の内容で質問をされていた。そこから見える窓の外にいた本郷は、彼が自分に気づいたのを確認してから、少しずつスカートを上げていった・・・
和紗が菅原氏に泉と一緒にいたことを訊きたくても訊けずにまごついていると、須藤に変な和紗と言われ、その言葉を聞いた菅原氏は、「そういえば泉くんも変な奴だよね」と評した。
偶然にも同じ印象を抱いた二人。
それはとある文芸作品の中で、恋と呼んでいた。
曽根崎は天城を屋上に呼び出し、添削つきのレポートを突き返した。
しかしその場で確認され始めたので止めさせようとしたら、かわいいが詰まった紙が青い空に散らばっていく。
慌てて手を伸ばして集める二人。
その時、彼は愛の言葉を紡いだ最後の一枚を偶然掴み取り、目を奪われた。
彼女は返事を読まれたのに気づいて逃げ出したが、彼が大喜びして叫んでいる声を、ドアを出たところで聞いていた。
感想
荒ぶる季節の乙女どもよ3巻でした。
面白度☆8 乙女度☆8
表面的な荒ぶり具合は徐々に少なくなっているようですが、心中のざわざわとした波が治まる気配はなさそうですね。
曽根崎の可愛さの急上昇が止まらない中、後を追う一番手に本郷が出てきそうな感じです。