18話

ギリギリの心理戦を乗り越えたナナは、見張りの体を繕いながら門に背を持たせかけて疲れを癒していた。

そこにミチルが現れ、自分が見張っているから少しでも休んで欲しいというので、お言葉に甘えて目を閉じた。

 

しかし程なくして首にカッターを宛がわれしまっていた。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

ナナの能力が読心術ではないと疑っているミチルは詰問してくるが、ナナは正体を明かさず煙に巻こうとし、相手が視線をずらした一瞬の隙で門に手を叩き付けてカッターを落とさせた。

 

しかしその場は他に人が来たことで、何事もなく終わった。

 

 

翌朝、ミチルは教室に入るなりさっそく仕掛けてきた。

 

日頃の感謝にプレゼントを持ってきたと大きな声で話しかけて注目を集め、プレゼント箱の中身を当てて欲しいと試した。

ナナは心を読むのにもコンディションに左右されると切り抜けようとしたが、箱の中身を答えるまで明日になってもみんなの前で訊くと囁かれる。

ならばと、ナナも信用を落とさず切り抜ける方法を考えた。

 

そしてお昼になってまた訊いてきたミチルに、他の多くの声が重なってミチルの声が聴き取れないと答えつつ、メッセージカードですか?と疑問系で答えた。

中身は入浴剤だった。

 

ミチルはナナの能力が不安定で信用ならないものだと遠まわしにこき下ろすが、ナナはここで仕込んでいた言葉を使った。

ナナしゃん大好き」という声が聴こえると。

その言葉を書いた紙が、ミチルの背中に貼られていた。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

自分で貼ったにも関わらず、さも気づいていなかった風を装い、切り抜けたナナ。

 

だが、放課後になり帰ろうとするナナにまたミチルが接触してきた。

 

 

ナナはあの断崖絶壁に誘い、本物のミチルはどこだと訊く。

昨夜門で打った手の怪我が治っていないのは、自分で怪我を治せないから。

そう問い詰めると、ミチルに化けた何者かはあっさり正体を現した。

 

橘ジンと名乗るその男は、かつてこの島の学校に通っていた先輩で、無差別殺人をしていてもミチルだけは気にかけているように見えるナナと取引がしたいと持ちかけてきた。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

 

19話

案内された先は、光が差し込んで割と明るい洞窟の奥だった。

そこには、それなりの生活ができる道具が揃っていた。

 

橘はユウカに操られたゾンビたちと同年代で、ナナがキョウヤに身体検査をされたことや毒針を凶器にしている事なども知っていて、5年前にこの島で何かとんでもないことを経験したらしかった。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

 

橘がいた5年前のクラスは、自然と誰が最強の異能力者であるか決める空気になり殺し合いを始めた。

最初に殺されたのは中島のような実力者の少年で、それをやったのが彼に恋心を受け入れてもらえなかった少女の犯行だった。

少年を惨たらしく殺した少女は隔離された後にリンチで殺され、リンチの主導者が次の犠牲者になり、その次は少女を殺した男が殺された。

強い者から消えていくうち、自然とグループができて争い始め、それぞれが人類の敵に操られているから殺さなければならないと思い込み血は流れ続けた。

教官たちは迅速に島から逃げ出し、空を飛べる能力者が追いかけてくると容赦なく迎撃した。

 

二つに別れたグループの争いは続き、やがて変身能力がある橘がうまく争いを躱し続けて最後の一人になった後で鳥になって本土へ戻り、実家に帰った。

しかし、唯一の身内だった祖母は孫が死んだと聞かされていて、警察を名乗る怪しい人間が接触してきたので彼は逃げた。

逃亡生活をしているうちに国家的な陰謀を感じて島に戻ったが、そこにいた後輩たちの中に明らかな異物のナナを発見した。

 

 

ナナが殺人の動機を語らないなら、殺してから海外生活にしゃれ込むつもりだという。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

そう脅した直後、コーヒーを飲んでいた橘は急に苦しみ出しあっけなく事切れた。

もちろんナナが毒を盛ったからだった。

 

ナナはいきなり現れた男のことを報告すべくスマホを取り出し電話をかけたその時、誰かにスマホを取り上げられた。

振り返ってそこにいたのは、キョウヤだった。

 

戸惑い、いつの間に来たのかと辺りに視線を動かすと、今度はミチルがいた。

後ずさりすると、セイヤに足元を凍らされて動きを封じられた。

 

そして橘は元の姿に戻った。

 

橘は人や動物に変身するだけでなく、その相手の能力までもコピーできる圧倒的な可能性と汎用性を持った今までで最大の人類の敵だった。

著者名:古屋庵 引用元:無能なナナ3巻

 

 

感想

無能なナナ3巻でした。
面白度☆8 衰え知らず度☆8

おもしろさがずっと維持されていますし、やっぱり心理の駆け引きがいいですね。ミチルの挑戦的な目つきはゾクッとしましたし、ネクロマンサー編のクライマックスは特に好きです。

まだ何が真実なのか分かりませんが、今はとにかくナナVSの駆け引きがおもしろいです。