東京核撃1巻1話2話3話4話5話
ネタバレ感想
東京核撃の漫画最新話と最終回まで、最新刊ネタバレと感想、あらすじ、画像、結末、漫画を無料で読める方法を紹介。
グランドジャンプで始まった細野史羽の東京核撃。
放射線防護・防災監修に高田純を迎え、核攻撃を受けた東京を舞台に、人々の生きる力が描かれる。
巻数目次
1話
確率は0ではない。
それを心のどこかに留めておくのは、どんな状況でも大切なことである。
東京都板橋区。朝の7時過ぎ。
佐原眞人は、母の言葉遣いを真似した宗太とゆいに眞人呼ばわりされていた。
妻であり母の祐希はもっと子供たちと遊んであげて欲しいと強く迫るが、眞人としては先月ガッツリ遊んであげたつもりだった。
ただその時は、防災意識を高める訓練をしただけだった。
就職氷河期を乗り越えて今の会社に就職した眞人。
とは言え、祐希も正社員で働いて子供の諸々の世話をしているので、昔みたいに引っ張ってくれなくなったと感じていた。
そんな訴えをしても、無邪気な子供たちの一言で有耶無耶になって保育園に二人を預け、それぞれの職場に別れた。
10時過ぎ、南青山の会社にいた眞人は祐希の願いを叶えてあげようと上司に連休が欲しいと頼んだが、のらりくらりと仕事を任されて休みは取れなかった。
祐希への申し訳なさで俯きながら用事で会社を出た瞬間、街中にサイレンが鳴り響き始めた。
一方、上野のバイクショップで作業をしていた祐希は店長から泊まりのツーリングにしつこく誘われて辟易しているところだった。
配達に出ている後輩がどこにいるか電話して確認した直後、スマホのJアラートと街中の緊急サイレンが鳴り出した。
街中に設置されているスピーカーからは、近隣国からミサイルが発射されたと繰り返された。
すぐに核ミサイル攻撃だと思い至った。と同時に、あるわけがないと思った。
しかし、眞人に倣って確率は0じゃないと信じ、すぐに配達途中の小幡に車は置いて地下鉄の中にでも隠れるよう電話した。
彼女もすぐにレジ台の後ろに隠れ、この前眞人に教えられた安全を確保するポーズでしゃがみこんだ。
だが、店長はミサイル攻撃など信じずガラス窓だらけの入り口に近づき、スマホで撮ってやるなどと言い出す。
同僚の琴音はレジ台の後ろに隠れたが、アドバイスを無視して腹這いで震え始めた。
午前10時26分。東京都千代田区永田町上空で核ミサイルが爆発した。
眩い光が放たれた後に大爆発と爆風が起こり、巨大なキノコ雲が姿を現した。
爆発規模20キロトンの核爆発が昼間の東京で起こった場合の予想死者数は42万人だった。
2話
祐希がいるバイクショップにも、最初に圧倒的で有害な光が降り注いだ。
目が潰れそうな眩い光に恐怖が限界に達した琴音は耐え切れずに立ち上がってしまい、悲鳴を上げながら入り口に近づいてしまった。
祐希は止めたがもう遅く、音よりも速い爆風が巻き起こってガラスが全て割れ、刃状の弾丸となって店長と琴音に降り注いだ。
光と爆風が治まり、祐希がレジ台の裏から出て二人に近づいたが、ガラスが突き刺さりまくっていておそらく即死と思われた。
祐希は店の入り口の向こうに、キノコ雲と壊滅した街の風景を目の当たりにした。
ここから、核爆発の被害についてが説明される。
核爆発の被害のうち95%以上が核爆発そのもので、その後の死の灰や黒い雨、放射性落下物などは割合で言えば些細なものである。
核爆発そのものの被害とは、こうである。
まず熱線。
上空600mの火球の中心は数千万度にもなるが、熱線の放射は10秒後には10%に減少する。
しかし、ビルだらけの東京は熱線に無防備だった。
ビルの外壁に熱反射ガラスが多用されており、建物の陰に隠れた人々をも火炙りにしてしまう。
次に放射線が降り注いでくるが、これはおよそ一分間も放射され続けるのである。
初期核放射線に曝露された現代ビル群に次に襲いかかるのが、爆風による衝撃波だ。
窓は砕け飛び散り、刃の弾丸となって人々を切り刻んでいく。
ここまでの核爆発そのもや、衝撃波で建物や高架道路の崩壊などの街の破壊にも巻き込まれた人々が即死の範囲に入る被害者だ。
それらの原因による即死から免れるも、数ヶ月以内に被災が原因で死亡する人が急性死亡に分類される。
即死、急性死亡を合わせた予想死亡者数は、2km圏内だけで42万人になると見られる。
その後の建物崩壊、火災などを含めれば50万人にも上ると見られ、7km圏内の負傷者数では300万人以上になるはずだった。
ただ、2km圏内の建物崩壊率が99%に対し、死亡者数は59%だと予想されていた。
これは、人の生きる力が加味されていたからだ。
祐希が即死を免れたのは、おぼろげでも核攻撃への備えができたいたからだった。
Jアラート発動一分以内に堅固な物の陰に隠れ、衝撃波等の直行面積が最小限になる屈みこみの体勢を取り、頭と目と耳の鼓膜を守るように手で防御。
店長のように無駄に強がったり、琴音のようにパニックを起こさずに最悪の事態を考えた結果、助かったのである。
まだ放射線があり、物質が自身の前にあればあるほど被害は少なくなるが、とにかく祐希は生きている。
著者名:細野史羽 引用元:グランドジャンプ2018年10号
ここからは、放射線危険区域からのできるだけ早い脱出が最優先になる。
3話
生きて外に出た祐希は自分が確かに生きていることを確かめるように手の平を見つめた。
直後、あの破壊の雲がある方角が眞人の職場がある方だと気づき、言い知れぬ恐怖がこみ上げて身体中が震え出した。
前の休みの日に、彼の提案で核爆発災害訓練をしたのを思い出した。
平和であるはずの日本で、核爆発の避難訓練をすることに意味がないと思い、不満を漏らした祐希だったが、彼はわざわざ訓練するのはJアラートが機能したからだと答えた。
眞人曰く、2017年8月29日、日本の民間人はあの隣国の軍末端より8分も早くミサイル発射を知らされたらしい。
その理由は、Jアラートの性能が凄いとしか言いようがなかった。
地震が多く、民主主義で、世界唯一の戦争被爆国。
その背景が高性能なJアラートを作り上げられた所以だろうという。
爆心からの距離によっては、そのJアラートで生存確率を上げられるから眞人は0ではない可能性を考えて訓練をしたのだった。
ここから、Jアラートの説明が始まる。
Jアラートとは携帯や街に流れる警報を含め、弾道ミサイルに関する政府の発表全てのことだ。
鉄道、公共機関に続いて個人に向けて順に伝達されていく傾向があり、爆発まで数分しかないことでほとんど意味がないと思われがちだが、その数分が生死を分けるには十分な時間になる。
爆心地付近もそうだが、数km離れるだけで地下や強固な建造物の中に逃げ込めば、およそ数万人以上の命が助かると予想されている。
祐希は心配性過ぎる眞人に苦笑いを漏らしもしたが、彼がそうならざるを得ない理由は知っていた。
しかし、爆心から1km以内だと全く意味がないとも言っていたのも思い出し、破壊のキノコ雲を見て絶望の悲鳴をあげた。
膝から崩れ落ち、嗚咽交じりの涙を流す。
その時、ポケットからスマホが落ち、彼からメッセージが届いているのに気づいた。
今朝、お互いの職場に別れた後で祐希からメッセージを送り、その次に来たメッセージはたった二文字だけ「たの」と書いてあった。
それを読んだ直後、スマホの電源が消えた。
それも、非常事態ではスマホが消えると彼が言っていたような気がするのを思い出した。
そして「たの」が「頼む」だと思い至った。
何を頼まれたかなんて、何よりも守るべき宗太とゆいの二人以外になかった。
祐希はとてつもない悲しみに襲われながらも、彼の頼みを叶えるべく立ち上がった。
非常用の物資をリュックに詰め、バイクのキーを挿してエンジンをかけ、ライダースーツを着込んでバイクに跨った。
まだ爆発から間もなく、放射線を浴びないように遠く離れるか屋内の中心で時間が経つのを待たなければ危険な状態。
爆心地から自分がどの程度の距離にいるのかで、遠く離れるか屋内で時間経過を待つかの判断が変わるが、それは母親として子供たち二人を助けてから決めることだった。
4話
祐希は我が子二人を助けに行くため上野の街をバイクで駆け出した。
その途中、7のつくコンビニから火事場泥棒が出てくるのを見かけて、ベッドに入ってそろそろ寝ようという時に彼が話し始めた7の法則を思い出した。
7の法則は核が地表炸裂した場合、特に有効で、経過時間が7倍になるごとに放射線量が10分の1になっていくというもので、つまり49時間経てばおよそ100分の1にまで減少するということである。
ただし空中炸裂なら火災の危険性が高く、その場で屋内待機か爆心地から離れるかの判断が生き残る鍵になる。
爆心であるグラウンドゼロと自分との距離。
ミサイルの違いによる爆発の威力を一定と考え、2km以内・2kmから5km・5km以遠を0地点から外に向かって全焼半径、脱出半径、屋内半径と呼称。
全焼半径内は凄まじい熱量に晒されていて全てが発火、大火災を引き起こし、放射線量も多く、留まれば死は免れず、即刻地下からの避難が必要。
脱出半径内は火災の危険は少ないものの放射線量は危険であり、1時間の屋内待機後に地下からの避難が必要。
屋内半径は火災や緊急の危険は少なく、情報収集に努めてそのまま屋内待機が望ましい。
そしてスマホも使えなくなる核爆発後に自分と0地点の距離を測るのに、自分の周囲の状況で調べる方法があった。
祐希は慎重に最速で走りながら周囲の状況を確認した。
周りの窓ガラスが割れずに残っていたら屋内半径にいるはずだったが、殆どが割れ建物の損壊も少なくなく、自分が全焼か脱出の範囲内にいると思うと死の恐怖に寒気がした。
ただ、脱出半径内ならまだ時間はある。
そこで全焼と脱出の見分け方も思い出し、眞人がおもちゃの車を手に取った姿が浮かんだ。
車の窓が割れているかではなく、一台でも横転していればそこは全焼半径といって間違いない。
祐希はボロボロになった多くの車を見逃さず観察し、一台も横転していないのを確かめた。
一先ず火災の危険は少ない。
しかし、サイドミラーに映った光景に目を疑い、振り返って直接見た。
東京が赤く燃えていた。
間違いなく脱出半径にいることは分かったが、屋内退避1時間を守っておらず、どれだけの放射線を浴びているか分からない。
一秒でも速く急ごうとグリップを回した直後、ついに多くの被災者がいるのが見えてきた。
瓦礫に埋もれて生きているかどうか分からない人。
怪我をして血を流し、泣き叫ぶ子供や助けを求める大人。
絶望した顔がそこら中にあり、祐希は助けなければと思いブレーキに手をかけた。
みるみるスピードが落ちていくが、その時、彼らと同じように泣いて怯えている二人の顔が浮かび、心を鬼にして先を急いだ。
そしてやっと、目指していた地下鉄の入り口が見えた。
上野御徒町駅。
バイクを降りてライダースーツを脱ぎ、急いで階段を駆け下り地下に潜っていく。
言い争っている男たちを横目に通り過ぎ、多くの避難民が逃げ込んでいるホームに辿り着いた。
5話
祐希が地下鉄のホームに下りた直後、駅員が拡声器を使って言わずもがなの現状を呼びかけた。
本日10時26分頃、千代田区付近で核弾頭が爆発。
その情報は地上から地下に逃げてきた人にとっては言われるまでもない事実だったが、元々地下にいた人々は俄かには信じられないようで、駅員に詰め寄った。
駅員も詳しい状況が分からず、この場に留まるようにしか言えない。
そうこうしているうちに核爆発から25分程が過ぎ、地下鉄内の電灯が明滅し始め、さらに人々の不安は増していく。
不安でストレスを溜める人々は駅員に強く詰め寄ることで気を紛らわせようとするが、まだ駅に詳しい最新情報は届いていなかった。
この場に留まっても埒が開かず、祐希は線路に下りた。
当然駅員は見咎めるが、いつ電車が動くのか訊かれても答えられない。
祐希は線路の状況を確認するためだと建前で言い訳してから、子供を助けに行くのだと事情を明かし、それ以上何も言わせなかった。
懐中電灯で照らしながら、意外と狭い地下鉄線路内の空間の中、もし電車が来たときに逃げられる場所を常に頭に置いて歩みを進める。
側壁の段差は歩くには狭く、仕方なく線路を歩くが、地下鉄のレールには高圧電流が流れているという情報を思い出し、祐希は寒気がした。
しかしそれは誤った認識で、電気が流れる第三軌条が敷かれている沿線に大江戸線は含まれておらず、そもそも第三軌条にはカバーがされて安全に配慮されている。
祐希は足音しかしない薄暗い空間に一人になったことで、またここに来るまでに見捨てた人のことを思い出し、自己嫌悪に陥った。
それも家族のためなんだと言い訳できる気力を残していたが、最愛の夫が生きているはずがないと思うと、また絶望感で身体から力が抜けていった。
その時、線路内の電灯も明滅して消え、驚きで懐中電灯を落としてしまい、それの明かりも衝撃で消えてしまう。
慌てて地面を手探るが、レールに電流が流れていると思うと、とても怖くてまともに探すことができない。
明かりがなくては歩くことも難しく、急激に恐怖がこみ上げ、生きている可能性が限りなく低い彼に助けを求めた。
恐怖心は子供たち二人まで取り返しのつかない事態になっている状況を想像させ、いよいよ身体中の震えが止まらなくなってくる。
その時、突然目の前に仄かな明かりが点った。
目の前にいたのは、くたびれて汚れながらも元気そうな眞人だった。
彼に言われてキーホルダー型の明かりがあるのを思い出し、それを点すと、足元にあった懐中電灯を見つけることができた。
いざという時に頼りになる彼がいてくれることで、一気に気持ちが落ち着いてきた。
爆心が永田町で、上野にいた祐希がほぼ無事な状態なら、高島平にいる子供たちはもっと無事な可能性が高いと、彼は論理的に祐希を励ました。
立ち上がり、母として二人を頼むと言い、手を伸ばして立ち上がるのを手伝ってくれようとする。
祐希は元気付けられて手を伸ばすが、そこには最初から誰もいなかった。
妄想で自分を励ました祐希は立ち上がり、再び歩み始める。
すると、後ろから明かりが近づいてくるのに気づいた。
もう電車が動き出したのかと思って焦るが、近づいて来たのは祐希を追ってきた人々の手に持った明かりだった。
祐希が出発した直後に連絡があり、特別に許可が下りて、情報収集を兼ね、十分に動ける何人かの人々が勇気を出して線路を進んでいたのだった。
やがて彼らは春日駅に着いた。
そこでは、まるでいつもと変わらないように既に地下鉄が動いていた。
感想
東京核撃5話まででした。
これは要注目の作品が始まりました。
広島と長崎の核被害はもう遠い過去になりつつあるのは、当事者たちが少なくなっているので仕方ない面もありますが、やはり忌まわしい過去として、防災意識を高める意味でも受け継ぐ歴史だと思います。
だから、こんないざという時のためになる題材の漫画は、とてもいいと思います。