55話

二階のバリケードの中で全員が臨戦態勢を取ったとき、遠野はあり合わせの材料で作った爆弾を披露し、至近距離で爆発させれば猿を殺せる威力だと説明した。

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

ただし、仕掛けを作動させてから爆発するまでの時間が読めないことが難点だった。

 

自爆する可能性も高い即席爆弾を使うつもりになっている早乙女たちに不安が増した飯塚は、強引に他の3人を一階に連れ出し、作戦を伝えた。

 

それは、南を殺して罪悪感に苛まれ精神が不安定になっている佐藤を唆し、猿が入ってきたら小屋に火を点けさせて汚れ役を押し付けるものだった。

 

小屋が燃えれば麓にも異常が伝わり、助けがきて猿を倒した英雄として下山できる。

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

そう言われた佐藤は、あっさりと火を点ける役目を引き受けてしまったのだった。

 

 

洗面スペース下の収納に隠れさせられた佐藤はライターとオイルを握り締め、言われるがまま飯塚の駒にされてしまう

 

 

飯塚、藤柴、佐藤の3人がなかなか戻ってこないのをおかしく思い始めたその時、二階の窓の外に猿が姿を現した

 

林が猿出現を知らせる笛の音が、安斎と佐藤の耳にも届いた。

 

 

56話

窓の外に姿を現した猿はすぐに闇に消え、屋根の上に足音を響かせ始めた。

 

他の猿か、窓を石で割られなかなか動きを捉えられない。

 

飯塚たちもどこで何をしているか分からず、鈴が鳴ったら突くと決めた。

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

隠れていた佐藤は階段板を踏む軋み音を聞き逃さず、猿が入って来たのだと思った。

 

早乙女たちも鈴がなるのが聴こえ、何かの影が近づいてくるのを布団の隙間に見た。

 

先陣を切った宮田が躊躇いなく影目がけて布団を貫き、すぐに八木も同じ辺りを突き刺した

 

 

布団が天井から外れて落ちると、そこにいたのはシャベルを持った安斎だった。

 

ただ加勢に来ただけだというが、興奮している宮田は聞く耳持たずに追い返そうとする。

 

その直後、木が爆ぜる音と焦げ臭さが二階に漂って来た。

 

 

安斎の足音を猿が侵入したと勘違いした佐藤が、もう火を点けてしまっていたのだった

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

57話

炎は瞬く間に階段を覆いつくし、二階にいる早乙女たちの避難経路を断った。

 

 

もうロープを張り巡らせた窓から出るしかないが、自分たちで仕掛けた罠が邪魔をし、隙間から猿が槍を突き出して閉じ込めようとしてくる

 

捨て身で杭で反撃を試みても、膂力で勝る猿の方が圧倒的に有利だった。

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

ロープを外していくも、窓に近いほど猿の攻撃が邪魔で危険が高くなり、煙が容赦なく充満していく。

 

そこで遠野は最終手段の爆弾を持ち出し、猿に向かって投げ手前の部屋に全員を避難させた。

 

しかし、投げた衝撃では爆発せず、こうなったらいつ爆発するのか作った本人も分からない

 

 

手前の部屋はさらに煙が濃く、このままでは助からない。

 

遠野は覚悟を決めて爆弾を抱きかかえ、今の内に脱出するよう促した。

 

 

安斎は早乙女に二人同時に窓から飛び出す、二分の一で一人は助かる方法を提案し、早乙女も受け入れて飛び出そうとした。

著者名:志名坂高次 引用元:モンキーピーク6巻

 

 

しかしいつの間にか、窓の外の猿は3体に増えていたのだった。