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13話

二ヶ月と少し前から数日が経った頃。

 

入江君はちゃんと次はどこに出かけようか、仕事中でも思いを巡らせていた。

 

そんな時、金子に訊かれるまま、またどこかに出かける話になっていると打ち明けると、いよいよ付き合う雰囲気になってきたなと言われた。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

まさか自分の好意の先にそんな未来があるなんてあまりに現実感に乏しく、まるで人事のように思えてしまっていた。

 

だから、次に出かける場所を調べるためにタウン誌を見るだけで、とてつもない恥ずかしさを感じるようになり、何気なく誘おうと思っていた二回目のハードルが高くなり、どう切り出していいか分からなくなった

 

 

信子の顔も見れるし、仕事の連絡も普通に話すこともできる。

 

でも、彼女と付き合う未来があるかも知れないと思うと、何も言えなくなった。

 

 

園児の頃からずっと、恋愛はすぐ傍で起きている遠い世界の出来事のように感じていた。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

 

そうして何も言えないまま日々は過ぎ、ついに季節まで変わってしまっていた。

 

 

これ以上進展が望めないと思っていたある日、思い出したように金子にあれからどうなったのか訊かれ、何も行動していないと正直に白状した。

 

もし彼女が自分の好意に気づいたら

 

そう思うと怖くて仕方なく、特別な会話はしないように努め、今の幸せで満足するべきなんだと思い聞かせていたから、どうしようもないことだった。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

すると金子は残念そうな顔をしながら「つまんねえなー」と、感想を漏らした。

 

入江君はその言葉を看過できず、思わず怒り任せに言い返した。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

しかしすぐ後悔し、取り返しのつかないことをしてしまったと思った。

 

 

だが、謝ったのは金子の方だった。

 

面白がっていたのは認め、でもいい雰囲気に見えたから上手くいくことを願ってくれていたらしい。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

飄々としていて訳隔てなく誰にでも接する金子でも、恋愛での勘違いは珍しくないという。

 

 

それを聞いた入江君は、誰でも自分の好意に不安を感じながら恋愛しているんだと気づき、自分が人一倍臆病なだけだったことにも気づいた。

 

 

頭の中だけで不安を膨らませていては、何も進展しないのは当然。

 

関係を変えたければ、好きな人に向き合わないといけない

 

 

 

青空に入道雲が映えていた。

 

扇風機を回した部屋でスマホの画面と睨めっこしながら、約二ヶ月越しで二回目のお誘いのメッセージを送った。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン91号

 

 

彼女の返信を読み、入江君はより一層前に進む決意を強くしたのだった。

 

 

14話

好きな人とメッセージをやり取りしていることに、信子は感動していた。

 

扇風機の風くらいじゃ顔の火照りが治まらないのに、普段の休みはどこに出かけているのか訊かれ、どう返していいものか迷った。

 

出不精で、でも趣味もなく、友達に誘われてたまに街ブラする程度の休日。

 

 

学校、職場、自宅とたまに本屋のルーティン以外のスポットが思い浮かばないでいると、それを察したように、後日一緒に行き先を決めようと提案してくれた。

 

どこに行くかを決めるのにも、二人きりで会う。

 

それもまたデートには違いないと気づかないまま、レンジに映った自分の顔が真っ赤なのを知り、募る想いの強さも知った。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

 

お互いのバイトが休みの日の学校終わりにカフェで待ち合わせ。

 

彼を待つ時間をそわそわして過ごし、来たら来たで顔を見ても咄嗟に一言目が出てこず、うまく話せるようにと願うだけだった。

 

 

入江君は雑貨屋にインスタ映えしそうな写真が撮れそうなメニューがあるカフェ、更に猫カフェやスイーツ情報など、意外と可愛い候補をスラスラと挙げてくれ、思わぬ一面を知れた。

 

信子も大学生男子が好きそうなスポットやイベントを調べていたが、何がいいか分からず、そのままプリントアウトしたものを持ってきただけだった。

 

すると入江君も、雑誌に載っていた女性が好きらしい場所を集めただけだと打ち明けた。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

たくさん付箋が貼ってある雑誌は、信子と同じように悩んでいた証拠だった。

 

 

お互いが相手のために集めた情報の中で、動物園が被っていた。

 

想い合う二人は同時にそこを選び、満場一致で次の行き先が決定した。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

 

週末のイベントに合わせて出かけることに決め、次に気になるのは当日の天気。

 

 

だったらどうしよう。

中止になったら、二回目のデートはもう来ないかも知れない。

 

そんな不安に駆られた信子は、傘を差してでも行こうと提案した。

同時に、彼は屋内の美術館を雨天時の候補に挙げた。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

二つ目はさすがに同じタイミングで同じ意見にはならなかった。

 

 

信子は自分がバカな提案をしたと思って恥ずかしくなり、俯いてしまうが、前に進むと決意した彼は、信子の願いを尊重して傘を差してのデートに賛成してくれた

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

行き先を話し合うだけだったが、もう二回目のデートのようなものは問題なく終わり、後ろ髪を引かれながら背中を向け合う。

 

 

振り返りたいけど振り返るのが怖い

 

もし今の真っ赤な顔を見られたら、きっと好意が伝わってしまうから。

著者名:田村茜 引用元:コミックゼノン92号

 

 

鞄のストラップをギュッと握る癖の力がいつもより強い気がしながら、今日は振り返らないと決める。

 

振り返らなくても横を向けば彼が見える未来にするために。

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