26話
大目玉は女神官に向かって眩い光を放った。
聖壁は砕け散り、女神官は吹き飛ばされた。
少し吹き飛ばされた程度で大事なさそうだったが、女神官はすぐに違和感に気づいた。
心配して支えてくれるドワーフに驚愕の形相を向け、術が使えなくなったと叫んだ。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
解呪。
女神官がそれを食らわされたとすぐに気づいたドワーフは、彼に大目玉の視線を遮るよう指示を出した。
心得た彼は手製の目潰しを投げつけ、まともに食らった大目玉はもんどりうって瞼を閉じた。
すかさずドワーフは岩の欠片を浮かせて精霊の力を借りる祝詞をあげ、目の前に霊壁を出現させて大きな盾を作った。
物理的に大目玉から姿を隠し、術を防ぐ作戦だった。
しかし、今度は大目玉からうねうね伸びている触眼が眩い光を放った。
それは、細く指向性を持った熱線で、ドワーフが作った霊壁をいとも容易く貫いた。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
大目玉が敵の戦力を削ぎ、触眼が熱線で攻撃する。
しかも触眼の数は多く、態勢を立て直して連携から反撃するのは難しく、彼は一時撤退を指示した。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
エルフは撤退しやすいように矢を射って手助けするが、熱線で相殺され、一本矢を失ったことに経済的なダメージを感じた。
部屋から出て壁の後ろに隠れると、大目玉は追ってきてまで攻撃してくる気配はなかった。
相手は一体でも手数は多く、また強力で、防御の要になる女神官がまた視線に晒されると聖壁を作り出せなくなる。
ただ見られさえしなければいつも通りに奇跡を起こせる。
彼はそこで、初めての戦法を試してみたいと提案した。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
それはエルフが懸念する水攻めや毒気攻めでもないらしく、街の真下でない今だからこそ、試せるのだという。
彼は4人に指示を出していく。
身軽なエルフは、大目玉の視線を引き付け部屋の中で攻撃を避け続ける。
ドワーフは安全なここから、酩酊で大目玉の動きを止める。
リザードマンは竜牙兵を作り出す。
そして女神官は、彼の合図で入り口に聖壁を張る。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
皆が指示を受け、新戦法の大目玉攻略戦がスタートした。
部屋に飛び込んだエルフに熱線が襲い掛かってくるが、ただ避けるだけなら造作もないエルフはひらりひらりと飛び躱し続ける。
しかし、弓使いのエルフとしてまだまだ未熟だと自覚している彼女は、姉たちに比べてパーティーへの貢献度が低い自分に歯痒さを感じていた。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
いつもエルフと憎まれ口を叩き合っているドワーフは彼女の軽快な動きを珍しく褒めながら、グビっと酒を呷った。
酩酊の祝詞と共に大目玉をむわっとした空気が漂い、じわじわと大目玉の瞼が重くなっていく。
完全に唱え終わると、触眼も巻きつき大きなボール状になった。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
大目玉が沈黙すると、彼も部屋に踏み込み小袋の口を開けて部屋中に何かを撒き散らし始めた。
白煙をあげるそれは小麦粉で、口を覆って訊くエルフに一足遅い注意をして睨まれた。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
そろそろ酩酊が解ける頃合だった。
続いてリザードマンの竜牙兵を部屋の中に進ませ、彼とエルフは外に出て避難する。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号
竜牙兵が白煙に包まれて見えなくなると、酩酊が解けても構わないから矢を当てて目覚めさせろと指示を出す。
矢が当たった直後、即座に聖壁を張れと言うが、それをしくじれば全滅するぞと必要以上なプレッシャーをかけた。
エルフはその指示の仕方に物申したい気持ちを抑え、矢を射って指示通りにただ大目玉に当てた。
そして女神官も即座に聖壁を発動させた。
著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号