初めての外交で全てを理解するのは容易ではなかった。
ミカサの立場が急に変わってきそうなことに大人たちは動揺を隠せなくなり、ゲストを待たせながら答えの出ない議論を始めようとする。
しかし、分からないことは分からないと判断したピクシスが場を治め、再びテーブルの席に着くよう促した。
ミカサが降って湧いた自分のルーツに戸惑う中、ヒストリアだけは笑顔を見せていた。
ミカサが昔からエレンに執着していることをからかいながら、自分と同じように重要な立場を持って生まれてきたらしいことに共感を覚え、友情を強く感じていた。
ミカサは迷惑そうにしながらも照れて何も言わないが、エレンにとってもヒストリアの笑顔は喜ばしいものだった。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
キヨミはミカサに、いつでもアズマビト家の人間になってもいいことを伝えてから、この会談のセッティングを実現に導いたある人物との関わりについて話し始めた。
パラディ島に将軍家の末裔がいると情報を流したのは、ジークだった。
ジークはミカサに会わせるのを仲介する代わりに、交換条件を出していた。
ジークはあらぬ疑いをかけられぬよう、自分が何者であるかを打ち明けていた。
フリッツ王家の血を引く母から生まれた自分もつまり王家の血を引いていて、それをマーレに隠したまま戦士長の座についている。
それはジークが、父の意思を受け継いでエルディア復権を目指しているからだった。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
ではなぜ、父と母をマーレに売ったのか?
当時7歳だったジークは両親が所属する復権派に捜査の手が入ろうとしていることを知り、自分を含めた一族郎党と復権派の全滅を防ぐため、両親を生贄にしたのだった。
両親の意思には賛同しているが、当時の復権派の働きでは願いを実現させることは不可能だと悟っていた。
だから、マーレで確固たる地位を築いて獣の巨人を継承した後も、エルディア帝国復活のためにパラディ島をめちゃくちゃにし、エルディア人を屠ってきた。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
マーレの始祖奪還計画成功と利害が一致していたからできた、悪魔の所業だった。
始祖の巨人と王家の血を引く巨人との接触。
それで何が起こるかは明かさず、将軍家末裔を求めているアズマビト家がこの取引に応じずにはいられない重大な情報をジークは提供していた。
ジークが見せたのは立体機動装置の動力部で、個人的に所持しているものだった。
それを進呈すると言ってから、氷爆石という鉱石が燃料として使われているのだと打ち明けた。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
氷爆石とはパラディ島でしか採掘記録のない貴重で未知な部分の多い鉱石だが、存在自体は巨人が生み出して蓄えてきた物だと言い伝えられていた。
巨人にしか生み出せず、パラディ島にしかない未知の燃料。
文明が遅れているパラディ島民はその真の価値を知らず、巨人殺しの兵器に流用しているだけ。
それが、ジークが持っている重大な情報だった。
いわゆる産業革命の希望を囁かれたキヨミは実際パラディ島に赴き、今やミカサよりもそっちが本命で、未知の燃料資源がどれほどのものをもたらしてくれるのかに涎が止まらなくなっていた。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
考えていることが顔に出る分かりやすさはありがたく、一国を統べる気苦労など、話しを聞いた面々はそれぞれに印象を変えていった。
ジークの取り計らいとは、パラディ島が自国だけで世界と渡り合えるようになるまでの、長期的な方策の提案だった。
一つ目に、地鳴らしを実験的に世界に公開することでどれほどの脅威かを知らしめる。
二つ目に、ヒィズル国がパラディ島の文明化に介入し、軍事力の底上げに協力すること。もちろん、ただ兵器を持ち込むだけでは自立とは言えず、教育、経済、外交、それを支えられるだけの人口増なども必要になる。
100年間鎖国してきた島ということもあり、世界に追いつくのにざっと見積もって半分の50年。
三つ目は、その50年間、地鳴らしが脅威であり続けることだった。
始祖の巨人の継承者と王家の血を引く人間を次代に繋げ続けることが必須であり、ジークは獣の巨人を王家の血を引く者に継承してもらうつもりだった。
つまりヒストリアは獣の巨人を継承し、寿命が尽きる13年の間に産めるだけ子供を産まなければならなくなる。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
今更ながらに、非人道的な血塗られた歴史の繰り返しを求められた。
50年には大した根拠もなく、レイス家のように子が親を食う残酷な方法で未来を創造することに、ハンジは違和感を拭い切れずにいた。
しかし異議を唱えられないまま、ヒストリアは獣の巨人の継承を受け入れると答えた。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号
誰も何も言い出さなかったが、エレンだけが立ち上がった。
ジークはエルディアの未来のために全てをやってきたと言うが、エレンは、壁を壊され、母を食い殺され、日常を奪われ、その上大切な仲間を子供を生む家畜扱いされることに賛成などできないと反論した。
今は地鳴らしに固執せず、あらゆる可能性を模索するべきだと発言し、ヒストリアに対する友情と未だ冷めぬ怒りを見せた。
著者名:諌山創 引用元:別冊少年マガジン2018年8号