3話

今日も今日とて冒険者たちで賑わっている酒場。

 

忙しく立ち働いているのはメイド服を着た獣耳の可愛い巨乳美少女で、モフモフした片手に麦酒が入ったジョッキ、もう一方には料理が盛られた皿を乗せ、楽しそうに働いている。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

その両手の注文は重戦士たちのパーティーに届けられた。

 

 

冒険から帰ってきた最初の楽しみに目を輝かせるのは、特に女騎士

 

しかし、一発目は麦酒と決めている女騎士は、男エルフが葡萄酒を頼んだのには一言言わずにはいられなかった。

 

こういう自分の嗜好を押し付けてくるところ以外は完璧に見えるから、この欠点を男エルフはするりと躱し、まだ余計な考えに毒されていない若い二人にアドバイスを与えた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

そんな飲む前から絡み出す女騎士を止めるのも重戦士の役目で、ジョッキを持たせて乾杯で冒険後の打ち上げを始めた。

 

 

賑やかなパーティーがいれば、二人きりで冒険をする落ち着いた雰囲気のパーティーもいる。

 

とは言え、槍使いは実力は確かだが血気盛んなところがあり、片や妖艶な魔女は相変わらず色気をたっぷり醸し出していて、労いの言葉を掛け合う。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

さっそく女給に声をかけ、何を注文するかメニューを仲良く覗き込み始める。

 

まず魔女が葡萄酒と鴨肉のソテーを途切れ途切れに。

続いて槍使いは骨付き牛モモ肉と林檎酒を。

 

すると魔女は、林檎に反応を見せる。

 

槍使いは林檎が食べたいのかと思い、否定しようとする魔女の言葉を聞かずに勝手に焼き林檎を二つ注文してしまう

 

魔女は話を聞かずに勝手に注文したことに頬を膨らませる

 

誰もが見惚れる可愛らしい顔にも槍使いは目を留めず、女給に受付嬢のことを訊き、男としてどうなのかと怪訝な目で見られた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

銀等級になるほど長い付き合いの二人に今更色恋など無縁なのかも知れず、だが他にも男女二人のパーティーはいた。

 

 

まだ駆け出しの新米戦士と見習い聖女だった。

 

冒険後の二人はあまりの疲労で食事を楽しむどころではなかったが、無理矢理にでも食べなければ次の冒険に行くこともできないので、手を上げるのもやっとの様子で女給を呼び、質素にパン二人分とオートミール一皿だけを頼んだ。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

そんな疲れきってお金もない新米冒険者に粋な計らいをするのが、この酒場のいいところだった。

 

女給のアイコンタクトを受け取ったシェフのおっちゃんは注文されてないチーズも添え、女給は恩着せがましくならないよう二人に届けた。

 

その優しさは、疲れきった二人の心と胃袋に沁み渡っていった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

その時、女給は目をつけているパーティーの気配を敏感に感じ取った。

 

 

酒場の扉を開いて入ってきたのは、ゴブリンスレイヤーと女神官、それに合同パーティーを組んでいるエルフ一行だった。

 

今日も当然ゴブリン退治をしてきたようで、それぞれに今日の感想を漏らしながらドヤドヤと入ってくる。

 

女給は食事を提供する者として、どうしても彼を見過ごせなかったのだ。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

冒険者御用達の酒場で、女給は彼らとも顔見知り。

 

まずリザードマンからさっと一品を頼むと、エルフ、女神官、ドワーフがさっと注文していく。

 

女給は最後の彼にだけ、今日は新鮮なカワカマスが入ったことをこれでもかとプレゼンし、普通ならこれで注文してくれるだろう雰囲気を作り出した。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

しかし、彼はいつものようにプレゼンを無視して注文しなかった

 

今日こそはと思っていた女給の願いを儚くぶち壊し、女給は次に懸ける。

 

それが、もう幾度か繰り返されていた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

 

その愚痴を吐き出す相手が、差し入れを持っていってあげている鍛治工房で丁稚をしている若者だった。

 

 

女給は丁稚に本当に気があるわけではないことをきっぱり伝えるのを忘れず、それは彼も言葉通りで駆け引きしているわけじゃないことを理解していた。

 

ただ女給は酒場で働く者として、ゴブスレに関してはプライドをかけてプレゼンしたものを食べさせたかったのだ。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号

 

 

丁稚もゴブスレが躊躇いなく武器をぽいぽい投げて戦うことを知っているので、自分が作った武器をそうされるところを想像すると、十分に共感できた。

 

 

ともかく、酒場のご飯を冒険後のゴブスレに食べさせたい女給。

 

食べないわけじゃない彼にどうすればいいのか分からずカウンターに突っ伏す彼女を見た丁稚は、彼女のとても魅力的な部分に目を奪われずにはいられなかった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年8号