天国大魔境1巻
ネタバレ感想
天国大魔境の漫画最新話と最終回まで、最新刊ネタバレと感想、あらすじ、画像、結末、漫画を無料で読める方法を紹介。
「それでも町は廻っている」の石黒正数最新作。
閉ざされた施設内で教育を受け、それなりに楽しい生活を送っている子供たち。
文明が崩壊した後の世界で、ある目的を持った少年とボディガードの少女が旅をしていた。
施設サイド
空が見えず、周りは壁に覆われた巨大空間。
学校か福祉施設のような建物に住んでいる少年少女たち。
周りには人工的な林が広がっている。
子供たちはグループに分かれて授業やテストを受けていて、指導・監督しているのは喋るロボットだった。
トキオという短髪で目が綺麗な少年は、数学のテストなのに最後の問いに、イエスorノーで答える「外の世界に行きたいですか?」があるのを見て、ロボット先生に意味が分からないと質問した。
しかし、次の瞬間にはその問題は消えていて、錯覚でも起こしたのかと思って椅子に座った。
子供たちは得意なことがはっきり違っていて個性的だった。
なぜか抜き打ちテストがあると予知し、この壁の外に世界が広がっていると確信しているミミヒメ。
テストの最後の問題が見えたトキオ。
頭の回転が速いが、体が不自由で車椅子に乗っているタラオ。
とても身軽でトカゲのように木に張り付けるクク。
絵が得意で奇妙な絵をよく描くコナ。
運動神経と身体能力が超人的で体も丈夫なタカ。
工作が得意で、ミミヒメが気になっているシロ。
トキオがテストにあるはずのない問いを見たその日、ミミヒメは壁の外に世界が広がっているようが気がしていると打ち明けた。
外の世界に出たいと願っているうちくっきりとしたイメージができてきて、外の世界から助けに来る二人のうちの一人がトキオにそっくりなのだという。
トキオはミミヒメの話が気になり、その日の夜、部屋を抜け出し建物を抜け出し、壁に近づこうとしたその時、園長先生たちに呼び止められた。
素直に外の世界があるか訊いてみると、園長先生はいずれ知ってもらうことだからと傍の二人を納得させ、外の世界はあると断言した。
ただ、外は怪物だらけの地獄だという。
次の日、タラオにその話をしてみると、外の世界というより、この施設には子供たちが入れない区画が少なくないからそこもある意味外の世界で、入らせないようにするための先生たちの脅しだと言われ、トキオは少し納得した。
その後、もらうはずだったコナの絵をククが持っているのを奪い取ろうとしたが、同じくコナの絵が好きだと言われると、素直に謝った。
ミミヒメと話しながら絵を描いているコナを見つけ、先にククにあげてしまった恨み言をぶつけると、次の絵はトキオのために描くと言ってもらえ、あっさりと機嫌を直した。
絵一枚で泣いたり喜んだり忙しいトキオをからかうミミヒメ。
それを羨ましそうに見ていたシロはその夜、シャワーを浴びた後でミミヒメからメールが来ているのに気づき、すぐに内容を見た。
しかし文面はなく、シャワーを浴びているミミヒメの写真が添付されていて、より意識せざるを得なくなってしまう。
後日、トキオとミミヒメがキャッチボールをしていると、タカが壁にも貼り付けるメンテロボットを二台、林の中にある太い柱に取り付け、それに乗ってどこまで上れるかという、危険極まりない実験を始めようとしていた。
ギャラリーに見つめられながら、平気な顔をしてどんどん上がっていくタカ。
しかし、コントロールできないロボットが左右に離れていき、タカは足を開くのも限界でなすすべなく宙に放り出されてしまって地面に叩きつけられた。
即死してもおかしくない高さだったが、平気な顔で立ち上がり、驚いたミミヒメに抱きつかれて鼻血を出したシロを、逆に心配するのだった。
そしてミミヒメは、キャッチボールをしていた時に何かが落ちてくる予感がしていた。
外の世界
文明が崩壊した外の世界を旅しているマルと、彼からお姉ちゃんと呼ばれているキルコ。
比較的荒れてなさそうな住宅地があれば、生活に使えそうなものを探しに堂々と家の中に入っていく。
時には運よく新品のトイレットペーパーが見つかることもあり、キルコはさっそくちゃんと便器に座って用を足し始めた。
でも、トイレのドアがなかったので、通りかかったマルにばっちり見られてしまった。
新築だったらしい別の家にも入り、色々物色していく。
だが、寝室には仲睦まじく手を繋いだままミイラになっている夫婦がいたので、この家から物を探すのを早々に諦めた。
感傷的になったのもあるが、災害後の死因で一番多かったのが餓死だと知っていたからだ。
当時は、人を食べて生き残った人もいたのかも知れない。
そう思うと、マルはスタイルのいいキルコに釘付けになった。
二人の関係はマルが依頼人でキルコがボディガード兼旅の友という感じだった。
ただ、キルコにも探している人がいたので、マルとの旅は一石二鳥だった。
民家の中で一晩明かした翌朝、女に飢えた盗賊連中に遭遇してしまう。
クズには容赦するつもりのないキルコがボディガードらしく銃を取り出し威嚇すると、盗賊たちは大人しく引き下がる様子を見せるが、本物の銃か怪しんだ。
二人は川を隔てるフェンスによじ登って逃げる。
それは、本物の銃だが使うのがもったいなかっただけだった。
仕方なく一発打つと光線が飛び出し、街路灯の柱をかき消した。
鉛の玉など比較にならない威力に、盗賊たちは手を上げた。
もちろん、逃げるフリをしたのにも意味があったが、バカ正直に明かすほどバカではなかった。
盗賊たちが住処にしている病院に案内させ、そこで電池を充電させている間、マルの目的地である「天国」という場所に聞き覚えがないか訊ねるが、盗賊たちは誰も知らなかった。
代わりに、トマト好きには天国のトマトで有名な場所があるらしいと聞き、後腐れなく病院を後にした。
街を抜ければ何もない殺風景な景色が続き、いい加減キルコの体力が限界に近づいたところでちゃんと営業している旅館に行き着いた。
そこは女将一人で切り盛りしている、地獄に仏なスポットだった。
ただ女将も天国は知らず、キルコの探し人にも心当たりさえないようだった。
さっそく久しぶりのお風呂を満喫する前、キルコは鏡に映った自分の体に見惚れ、鏡の中の自分とキスしようとする。
そして、唇が触れる直前で女将がタオルを持って入ってきて慌てふためいた。
露天風呂は最高に気持ちよかったが、男湯と隔てる壁がなくなっていたのでまたマルにあられもない姿を見られる。
物騒な銃を所持している女将の話によれば、この辺りには怪物が出るらしい。
それは二人が人食いやヒルコと呼ぶものに違いなかった。
自分たちなら怪物を殺せると申し出たからか、出ないはずの夕食を用意してくれ、おまけに近親相姦は生まれる子が不幸になるとかなんとか諭され、思わぬ恥ずかしい思いをさせられる。
キルコはボディガードと警護対象以上の気持ちはないと強く言ったため、淡い想いを抱いていたマルの機嫌を損ねてしまう。
その夜、疲れのせいか布団に入るとすぐ泥のように眠りについた。
深夜、悪夢を見たキルコが目を覚ますと、女将が言っていた怪物が窓の外から覗いているのを見た。
既に外に出て銃で追い払おうとしている女将。
睡眠薬を盛られたことに気づいていたキルコはマルにも水を飲ませ、怪物退治に参戦した。
キルコが光線銃で動きを鈍らせてから、マルが近づいて止めを刺すことになった。
うまく光線を当ててダメージを与え、あと一発で十分というところで女将がキルコを庇うように飛び掛ってきた。
しかしそれは、息子である怪物を守るためだった。
息子があの怪物に食われた後、乱暴しようとしてきた客から助けてくれたこともあるのだという。
女将に害がないなら、危険を冒して退治することもない。
そう二人が思った直後、女将は怪物を安心させるために近づいて話しかけ、頭と体を切り刻まれて吸収されてしまった。
二人はやるせない悲しみを乗り越え、マルが不思議な力で怪物に止めを刺した。
どうして今まで女将が生かされていたのか?
それは深く考えないようにした。
サバイバル生活が続き、キルコも細かいことにこだわらなくなってきた頃、街を押し流してできた大きな川を渡らなければならなくなった。
数日かけて作った不安定な筏に乗り込み、ワニや鮫がいないことを祈りながら全力で漕ぎ、無事に対岸に着いた。
しかし、筏はもろくも崩れ去った。
川を当たったそう遠くない先に、盗賊が話した農園があった。
マルが探していた天国かも知れない場所に着き、彼は自分と同じ顔の奴にある「薬」を打つよう指示されているのだと打ち明けた。
天国に行き、同じ顔の奴に薬を打てば多くの人が助かる。
ミクラからそれしか聞いていないマル。
彼女の最期を看取ったキルコも、銃を渡されながらマルを天国に連れて行ってとしか聞かされていなかった。
草壁農園と名乗っているここら一帯の住人たちは二人を快く迎え入れ、取り仕切っている草壁夫婦のところに案内してくれた。
草壁一家が開拓し始めた当初、トマト栽培から始めたからトマト天国と噂されているだけのようで、今は色んな作物を作っているらしかった。
みな穏やかそうで、自給自足の暮らしを満喫しているようだが、彼らは大麻を吸って辛いことを忘れているだけのようでもあった。
マルとそっくりな誰かがいなさそうだと分かった代わりに、キルコを電力車レーサーの竹早桐子と呼ぶおっさんが現れた。
キルコは否定するが、見比べた写真は確かにそっくりだった。
空気の読めないことを自負するおっさんは、レースの表舞台からいなくなった原因の痛ましい事故を躊躇いなくほじくり返し、マルまで怒らせて空気を悪くする。
しかしその後、天国探しに有力な情報を見つけ、連絡船で東京に戻ることにした。
東京へ戻る船内で、マルは天国探しを諦め、キルコと畑でもしながら一緒に暮らしたいと頼み、勢いで告白した。
真っ赤になって戸惑うキルコを見つめていると15歳の性衝動がほとばしり、勢いに任せて一発キスをぶちかまそうとしたが、嫌がられると止める理性は残していた。
本気の告白をされたキルコも、好きになってくれたお礼を言ってから自分が何者であるかを打ち明けた。
身体は女だが頭の中は男。
だから、男だと。
感想
天国大魔境1巻でした。
面白度☆8 石黒度☆8
そこかしこに伏線がありそうですが、それがどれなのかは実際に読んで確かめるのが一番楽しめるでしょう。
天国らしき施設内と崩壊した世界の時間軸が一緒なのか、マルとトキオの関係、ミミヒメの予知能力、なぜ子供たちは閉ざされた世界にいるのか、それぞれの得意分野に意味はあるのか・・・
そして、キルコの答えにマルは納得できるのか!?