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心に抱きつき、再会を喜ぶその人の様子は確かに姉の鈴に間違いなさそうだった

 

しかし、長い年月が経ったにしても、顔がかなり変わっているのを見過ごせず、心は本当に姉なのかどうか怪しんだ。

 

確かに彼女は鈴だったが、整形して顔も名前も変えていたのだ。

 

 

一緒に住んでいる誰かに見られたくないらしい鈴は場所を変えようと言い、歩きながらこれまでのことを話し始めた。

 

 

養護施設を出てからも、心の様子は学校の行事等の時に見に行っていたという。

 

だが、加害者家族が生き辛いのはどこにいてもそう変わるものではないらしいのが、遠まわしな言い方でも十分伝わってくる。

 

心もこれまでの人生を訊かれるが、この世界でどう生きていたのか分からず、適当に言葉を濁すしかなかった。

 

それでも、薬指の指輪はつけたままで、今は一人とだけ答えておいた。

 

 

母が子供の生活を心配するような質問をいくつか重ねてから、鈴は携帯を取り出し連絡先の交換をしようと持ちかけた。

 

心の携帯画面に表示された名前は、村田藍だった。

 

その時、鈴の携帯に着信が入り、少し緊張した顔を見せた鈴は弟に別れを告げて家に戻っていった。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

 

鈴を呼び戻した相手は、やはりカーテンの隙間から見知らぬ男が鈴と会っていたのを見ていた。

 

鈴は正直に弟だと答え、訪ねてきた目的は適当にでっちあげた。

 

鈴を藍と信じている車椅子の男は、彼女に弟がいることに驚き、会えなかったのを残念がった。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

車椅子の男は一緒に暮らす鈴に弟がいることを初めて知り、あれこれとどういう人なのか聞きながら、話してみたいと、当然のことを言い出した。

 

以前、確かに一人っ子だと言っていたのを掘り返し、じりじりと自分のことを殆ど話さない鈴を追い込んでいく

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

鈴は観念し、名前は心だと答えた。

 

 

名前を知れただけでも笑顔を零す男はしかし、鈴が弟をこの家に呼ぶ気がないと分かるや、テーブルにコップを叩きつけ、秘密主義の彼女に怒りを表した。

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

コップを持つ手も注ぐ手も震えて、カタカタと音が鳴ってしまう鈴。

 

それを見ると、男は鋭い目つきを和らげ、話を変えた。

 

 

 

ネットカフェに戻って姉のことを検索した心は、鈴のしてきたことであろう苦労を我が身と重ね、食事に誘ってきた鈴からのメッセージに了承と、一緒に文吾に会いに行こうと返した。

 

 

 

その頃文吾は、弁護士から佐々木紀子が無実を証明するための証拠を持っていると連絡があったことを伝えられていた。

 

 

 

後日、心と鈴は駅前で待ち合わせて会った。

 

文吾に会いに行く前にお互いに話そうと思っていたと分かると、鈴は祖父と一緒に入っている母と慎吾の墓に連れて行った。

 

 

この世界の母は、心が3歳の時に亡くなっていた。

 

本来の世界の母はまだ生きていて、過去で会った若い母は優しく明るく、活力のある人だった。

 

そんな二つの母を心は同時に思い出した。

 

 

線香をあげながら手を合わせる鈴は、孤独は人を狂わせるのだと言った。

 

 

父が大量殺人犯にされてから加害者家族を誰もが疎み、憎み、敵視した。

 

誹謗中傷の電話は日常茶飯事、家は落書きされ、石は投げ込まれ、気丈な母もストレスに耐えかねて急に破水してしまったが、村の病院や医療従事者さえ、誰も助けようとはせず、母は自力で心を産むしかなかった。

 

村を出て、母の旧姓に戻しても加害者家族だと知られれば酷い仕打ちを受け、鈴は何も関係ない同級生に毒紛いのものを盛られて殺されかけた

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

鈴がどうにか退院できても、どこにいても平穏な生活が送れないと実感しただけだった。

 

その矢先、慎吾が何気なく父の話をしようとした瞬間、母は理不尽に頬を打った。

謂れのない咎を責められる生活を送り続けた結果、限界を見せ始めたのだった

著者名:東元俊哉 引用元:テセウスの船5巻

 

 

 

感想

テセウスの船5巻でした。
面白度☆8 恐ろしい度☆9

本来の自分がいた世界とは違う未来に行ったにしては、過去体験がある分、大分冷静ですね。

バック・トゥ・ザ・フューチャーっぽくなってきて、どんな結末に落ち着くのか期待してますし本当に楽しみです。

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