ただ離婚してないだけ
19話20話ネタバレ感想
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姪に佐野を見つけられるも発覚することなく、佐野に反撃されるもギリギリで切り抜け、やがて雪映のお腹は妊婦だとはっきり分かるほどに大きくなり、3人家族になる前の最後の旅行に温泉を選び、かつての仲睦まじさを取り戻した。
この頃、佐野はまだ生かされてはいたが、風貌は老人のように衰えてしまっていた。
19話
二人が住む地域で二つの祭りが同時に開催されていた。
ここ数年で爆発的に広がったコスプレイベントと、まだしぶとく地域活性化に使われているゆるキャラのイベントだった。
それに合わせて雪映の妹夫婦が遊びに来ていた。
身重になった雪映の様子を見がてら、ゾンビナースやアメリカンポリスのコスプレをしている女子校生二人を見たらしく、大通りは歩行者天国に変わっていたのだという。
大人たちが話す中、姪の陽菜は間隙をすり抜けて「ママー」と呼び、彼女はトイレはリビングを出てすぐだと教えてあげた。
そしてまた姉の身体を気遣ったり、雪映がそれに応えたり、夫は目撃したコスプレの元作品を思い出したりしていた。
正隆は上機嫌にビールを流し込みながら会話に混ざり、顔を赤くしていた。
大人たちが完全にリラックスしている中でトイレから出てきた陽菜は、何カ月か前に見た見覚えのない男のことを思い出し、二階への好奇心がこみ上げた。
足の向きをリビングには向けず階段に向けた陽菜は歩き出し、薄暗い上階へズンズン足を進めた。
真っすぐにあの部屋の前に立ち、ドアノブを見つめる。
幼心にグッと覚悟を決めてドアノブを掴んで開けようとしたが、ガチャガチャとなるだけで開かずに戸惑う。
直後、正隆に声をかけられてビクっと驚いた。
もう些細なミスをしていなかった正隆は冷静さを保ち、その部屋は開かないとだけ答え、陽菜が以前に誰かいるのを見たと言ってもいい加減に答え、2階に上がってはダメだと言い含めた。
陽菜が素直に受け入れると用意していたケーキを餌に話題を変えて意識を逸らさせ、一緒に一階へ戻った。
もちろん佐野にも二人の会話が聞こえていたが、満足に声を出すことも手を動かすこともできないので、存在を伝えるような行動を起こせなかった。
いや、起こさなかった。
妹家族が祭りを見に一旦出かけていくのを見送った正隆が中に戻ると、雪映がもう食事を用意していた。
佐野の食事をアレと言う雪映も感覚が麻痺しているらしく、正隆も気の利くソレを気分上々のまま受け取って階段を上った。
正隆がドアを開けた瞬間、精巧な腹時計か、足音でそれと判断しているのか、佐野は餌を待ち侘びていた犬のように反応し、目をギラギラさせた。
奴隷かまさに犬か、手掴みで口に放り込んでいく佐野を見た正隆は定期的に見るこの光景にもう何も思わず声をかけ、自分でケツ拭いてオムツを変えるんだぞ、と一応指示した。
できるだけ傍に寄らない方がいいと判断したのか、手が自由になる時間で佐野自身に自分の世話をさせていたのだった。
するべきこと、言うべきことを言った正隆が部屋を出ていくと、佐野はトレイを部屋の奥側へ置き換えてカメラに背を向け、またガツガツと食べ始めた。
キッチンに戻った正隆は鍋の用意をしながらもちゃんと佐野の様子をスマホで確認し、特に異変のないことを確認したつもりだったが、画質はかなり荒かった。
佐野はいつも通りに荒々しい息遣いで食べているように見せかけ、壁に貼り付けられたクッション材の隙間に手を差し込み、いつの間にか手に入れていた壁の破片を握り、首輪を削り始めた。
喉にかかる衝撃などに構っていられず、唾液を飛び散らせながら全力で首輪に破片を打ち付けていく。
食事の準備が終わり、席についた正隆はこの時でも監視映像を確かめてはいたが、ただ佐野がいつものように飯にがっついているだけだと思い込み、緊張感が緩み切っている危険さに思いが及ばない。
そして佐野はついに破片の先が壊れる音を聞き、手を止めた。
かなり削れて脆くやわやわになった部分の両側を掴み、痩せ衰えた腕に全力の力を込めて引っ張り始める。
唸りながら、全身をブルブル震えさせながら全力を出し、忌々しい首輪をついに引きちぎった。
しかしまさか佐野が自力で拘束を解けるなどと思いもしてない夫婦は仲良く鍋をつつき続け、どのアイスなら食べていいのかなんて、お腹の中の子供の影響第一の会話を楽しんでいた。
佐野が首輪を外し、自由を手に入れたことにまだ気づいていなかった。
20話
佐野はついに自由を奪っていた首輪を破壊することに成功した。
カメラは雄叫びと見えない天に向かって手を振り上げた佐野をずっと映し続けていた。
ドアを振り返った佐野は歩き出すが、久しぶりにしたまともな歩行はおぼつかず、足に力が入らずに一度こけた。
膝に手を突いて何とか立ち上がると、さっきまでの荒い呼吸を続けながらカメラをわし掴み、ドアノブも掴んだ。
ガチャガチャと動かすが当然鍵がかかっていて、外界に続くドアを忌々しく叩きつけた。
ドアがダメならコツコツと削り続けた壁に向き直り、カメラの脚立を思いっきり突き立てた。
まさに脱獄計画。
彼女に浮気された挙句に犯罪の証拠隠滅のために監禁されただけの佐野はこんなところで死ぬわけにはいかないと願い、怒り、階下に音が響くのも構わず脚立を突き立てていく。
打ち付けられた板の間に食い込ませ、てこの原理で板をぶち割った。
ダイニングで気分よく食事していた雪映は、ふとその音に気づいて手を止めた。
天井を見上げて何か聞こえた気がすると漏らすと、正隆も映像が送られているスマホに注目し、ようやく異常事態に気づいた。