親を殺された少年とお隣さんの殺し屋
10歳になる仁輔は母親のひとみと二人で、小さなアパートで暮らしていた。
父親が亡くなってからは、母が風俗で働いて稼ぐ日々。
必然夜も遅くに帰宅してしまう。
そんな夜は、安いアパートのせいか隣にも音が響き、隣のスズキさんが苦情を言いに来ることもしばしば。
10歳の誕生日。
二人だけのお祝いも夜遅くになってしまった。
写真を撮るのが好きだった父親。
ひとみは考えを巡らせ、父親と同じメーカーのデジカメをプレゼントに選ぶ。
以前住んでいた部屋は、写真をたくさん貼ったボードがあったが、今の安アパートに移る際に、全て置いてきていた。
また写真でボードをいっぱいにしようという、仁輔への詫びと母の願いだった。
早速一枚撮る仁輔。
自分を手前に奥に母を。何気ない日常の写真でもいいと、母に感謝を告げる仁輔。
惜しみない愛情を注ぐ母とそんな母を慕う息子にとって、この夜が一緒にいられる最後の夜になった。
不意に開くドアから銃を持った手が現れた。
ドアを背にしていたひとみは後頭部を撃たれ即死。
ケーキが足元でひしゃげていた。
禿げたメガネの中年男はさらに仁輔にも銃口を向ける。
その時鳴り響くインターホンの甲高い音。
物音に気付いたスズキがまたも苦情を言いに来た。
男はドアを開け銃を彼女に向ける。室内に引き入れようとしたが、逆にスズキに銃の向きを返される。
男が危ないと思った時には、既に数発の銃弾で命を奪われていた。
気を失う仁輔。
ごたごたに巻き込まれた、ただ静かに暮らしたかったスズキ。
短い間に父と母を失った仁輔。
不幸な連鎖で繋がった二人は、これからどうしていくのか。
元殺し屋と少年の共同生活
仁輔を連れ身を隠したスズキ。
彼が忘れたと言うデジカメを取りに行くため、アパートに戻ると、二人のチンピラ風の男が部屋に居た。
隣室の薄い壁から撃ち無力化した後、詳しく事情を訊き出そうとする。
ひとみを殺した禿げに雇われたというチンピラ。
どうやら仁輔たちは、1年前に起こった「5億円事件」に関わりがあるらしい。
禿げは警察庁警部補の小野寺了(59)。
現金輸送車を狙った「5億円事件」の担当官だったようだ。
警察も信用できないと知り、スズキは仁輔を連れて、海の見える遠くの町で新生活を始める。
救いのない1話目で心掴まれる
幼い子供と母親の二人暮らし。
少し重さを感じながらも、アットホームや感動させるストーリー展開にしていくのかと思った矢先、いきなり母が殺されるという絶望感を味わう。
警察組織のへどろ部分に浸かりきった悪徳警官の悪事を目撃してしまったせいで、抹殺されていく家族。
社会派サスペンスと、非常になり切れない元殺し屋の女の組み合わせが、絶妙にいい。
仁輔といることで母性を目覚めさせていく過程も、スズキの魅力になっていてほっとさせる。
完全な悪である犯人側の女警官が、蹴り一発で沈んだのには爽快感が半端ない。