マザーグール1巻
ネタバレ感想
聖エルレシアン女学院。
良家の子女ばかりが集うお嬢様学校では、修学旅行で豪華客船を貸し切り、遥かなる海を渡ってドバイを目指していた。
しかし、航海途中で消息を絶った・・・
巻数目次
桐島朔也
スクールカースト上位グループに属し、同じ良家のお嬢様と楽しく学校生活を送っている。
しかし、他人に幸せであると見てもらわなければならないという強迫観念に囚われていて、心の中では幸福を感じていない。
常に首にかけているロケットペンダントには、愛しの君の写真を忍ばせている。
東雲なつの
才能に溢れた陸上部短距離走者。
だったが、膝の怪我により陸上を引退してからは一気に輝きを失い、教室の中でも机に伏せっていることが多くなった。
財前楓子
首にヘッドホン、奇抜なヘアカラーと、学内でも異彩を放つはぐれ者。
男遊びの噂が絶えず、同級生たちからの評判も著しく悪い。
九重すず
他人が嫌がることを誰に言われるでもなく率先してやる、心根の優しい子だが、それが逆に甘やかされて育ったお嬢様たちには疎ましく見え、空気の読めない人間のレッテルを貼られてしまっている。
東伏見笙子
学年全体から慕われ、周りに人が絶えない人望の持ち主。
誰もが笙子様と呼んで憧れの目を向けられている。
この孤島では上記4人と漂着場所が離れていて、その動向は「HOLY HOLY」または「旧約マザーグール」で確認できる。
無人の島で
優雅な船旅でティータイムを楽しんでいたその時、突然カップが倒れて制服に染みを作った。
直後、カップと朔也は宙に投げ出されていて、海と空が逆さまに見えた。
どれくらいの時間が経ったのか、酷い暑さと喉の渇きを覚えて目を覚ますと、どこかの島に流れ着いていた。
朔也を見つけて介抱してくれたのは、なつの、楓子、すずの3人だった。
しかし、学園のはみ出し者3人と一緒にいるところを誰かに見られたらと思うと、彼女は感謝よりも恥ずかしさがこみ上げた。
そして3人は、朔也が起きて体調に問題なさそうなのを見て、偶然笙子たちが乗るボートがこの島のどこかに流されてくるのを目撃していたので、合流するため鬱蒼と生い茂るジャングルの中に足を踏み入れていった。
そのボートに笙子たち以外に、眼鏡をかけた愛しの君も乗っていたことを聞き、朔也は酷い運命の中で、一つの楽しみを見出した。
しかし、ジャングルの中をかき分け進んでいる内に、なつのが脱水症状になりかけてしまう。
すずは気持ち悪いゲテモノ昆虫など気にせずに、水分を多量に含んだ蔓を叩き切ってなつのに飲ませた。
そんな3人のことを、朔也は蔑んだ目で見た。
だが、すぐに楓子が言い返した。
「半日寝ていたあんたを寝ずに看病したのがすず。
自分の分の飲み水をあんたに分け与えたのがなつの。
何もせずに寝ていただけのあんたに、見下される筋合いはない!」
すると彼女は楓子に体当たりして吹き飛ばし、一人で笙子さまと合流するからと言って駆け出した。
その時、ロケットを落としたことに気付いたが、もう遅かった。
それを拾った3人はすぐに中を見て、収められている写真がA組の同学年だと分かった。
まさか朔也がそっちの趣味だとは思わず、単純に驚いて彼女を羞恥でいっぱいにさせてしまう。
誰にも知られたくなかった秘密を知られ、彼女は闇雲に走り出した。
その時、進む先から吉川が走ってくるのが見えた。
落ちこぼれ3人に比べたら、どんな相手でも良かった。
しかし、吉川は恐ろしい形相で何かから逃げているようだった。
朔也の手が届く寸前で、彼女は木の上から手を伸ばしてくる化け物に捕らえられてしまった。
巨大な一つ目。
人間とよく似た巨大な手と鋭い爪。
人間も磨り潰せそうな巨大な歯と口。
吉川は無残に食い殺され、朔也は彼女の血を浴びたまま逃げることしかできなかった。
最初の発見
あれがなんなのか、どうしてあんな化け物がこの現代社会にいるのか、何もかも訳が分からなかった。
3人と共にジャングルの中を走り抜け、数頭のヤギを見つけた。
そのヤギが導いてくれたのか、ようやく滝が流れ落ちる水場を発見できた。
彼女たちは制服を脱いで下着姿になり、浴びるほどに水を飲み、汗と泥に塗れた身体の汚れを落としていった。
朔也は目の前で殺された吉川の名を呟き、彼女の血が染み込んだ服を力いっぱい擦った。
これからどうするか決めようとしていた時、水の中にフォークが落ちているのを見つけ、滝が流れている岩場の途中に窪みがあり、そこに杭らしいものが打ち付けられているのも見えた。
それらの人工物がどういう意味を示しているのか分からないまま、吉川を殺したあの化け物が、再び彼女たちの前に姿を現した。
しかし、化け物は襲ってこなかった。
もしかしたら4対1なら手を出してこないのかも知れないと考え、今の内に岩場の窪みに避難することにした。
中は結構奥行きがあり、入り口が狭くて化け物は入って来れなさそうだった。
まずすずが上がり、次に楓子が上がって、二人で朔也を引っ張り上げようとした。
下では一人でなつのが朔也を押し上げようと踏ん張っている。
その状況の危険さに気付いた時にはもう、化け物は全速力で近づいて来ていてなつのに歪な爪を伸ばしていた。
爪はなつのの太ももに突き刺さったが、どうにか洞窟の中に逃げ切ることができた。
しかし、化け物は諦めずに手を伸ばして彼女たちを引きずり下ろそうとして来る。
楓子が落ちていた棒切れで応戦するが、怪力の腕に掴まれてびくとも動かない。
その時、理不尽な状況と自分が足手纏いになったせいで傷ついたなつのが怪我をしたことで、朔也は恐怖に立ち向かうことに決めた。
すずからフォークを受け取り、楓子相手にもたついている化け物の目玉に手首が埋まるほど突き刺し、見事に滝壺の中に落として撃退することに成功したのだった。
脅威を退け、なつのの手当てのためにシャツに蜜蝋リップを塗ってライターで松明を作って灯りを点した。
そこで彼女たちは、驚愕の光景を目にする。
修学旅行の夜に
洞窟の奥には、マリア像や仏像、絵画に各種武器など統一感なく押し込まれていた。
そして、日本兵の白骨があり、それはなぜが手錠で繋がれていた。
人がいた痕跡を発見できたのはいいが、例えまだどこかに人が暮らしていたとしても、その手錠の意味によっては、脅威が増える可能性があった。
湧き上がる不安と共に、雨が降り出した。
今夜は洞窟の中で一晩明かすことにした時、朔也は突然恋バナを彼女たちに振った。
修学旅行の夜の定番。
恋の話じゃなくても、秘密の暴露でも構わないと彼女が提案し、なつのは陸上に関すること、楓子は自分の家族のことを打ち明けた。
秘密のペンダントを見られ、共に危険に立ち向かい、重たい秘密も聞いた朔也は、学校で平和に過ごしていたときに感じていた3人への見下した心は、すっかり消え去っていた。
うとうとと眠りに入りかけ、愛しの君が夢に出てきて股間が疼いた瞬間、朔也は背徳感で目を覚ました。
しかし、現実に戻ってきたはずなのに、なぜかまだ股間の辺りがもぞもぞしている。
それは欲情しているからではなく、スカートの中に何かいるからだった。
その正体は、あの化け物が産んだであろう赤ちゃんだった。
そして、目を潰して撃退したのとは別の化け物が、入り口から入ってこようとしていた。
ガラクタの上の方には、外に出られそうな隙間があった。
入り口の化け物を倒して外に出るにせよ、上の隙間から外に出るにせよ、上まで登れるようにガラクタを積み上げておいて、逃げる経路を用意することにした。
朔也は率先して動き、今までは嫌いで見下してきたけど、今は3人とも結構好きになったと、ストレートに打ち明けた。
絆が深まっていく4人。
無事に帰って学院で4人一緒にお昼ご飯を食べようと励ます楓子の背後に、いつの間にか入り口から侵入していた化け物が忍び寄っていた。
感想
マザーグール1巻でした。
面白度☆7 グ-ル度☆7
HOLY HOLYの続きを待ち詫びて、早幾年月。
続編じゃなくて、キャラを一新して新しいのにしちゃっったかと残念に思いましたが、どうやら視点を変えているだけで、前作の話は生きているようで良かったです。
それでも、眼鏡ちゃんの方が気になるのは隠せないのも事実。
合流してトラブルなり希望なりが生まれて、わちゃわちゃするところが早く見たいです。