ノイズだらけの不鮮明な映像でも、佐野が大人しく食事していないことが分かったし、いつもの視覚ではなかった。

 

まさかと思いながらも一目散に二階へ駆け上がる正隆は、ただの取り越し苦労であってくれと願い、ドアを開けた。

 

夢であってくれという願いは、悪夢として現実になった。

佐野は拘束から脱しただけではなく、板とクッションを取り外して外に逃げていた

 

ちょうどそこは窓になっているところで、窓がある部屋、そこに届く範囲までの最低限の自由を与えたことがまたしても重大なるミスに繋がったのだった。

著者名:本田優貴 引用元:ただ離婚してないだけ20話

 

 

佐野は住宅街の中を全力で走っていた。

 

ブリーフ一枚でガリガリに痩せ、頭髪も歯も抜け落ちたその姿は不審者どころの不審ぶりではなかったが、幸か不幸か人通りが全くなかった

 

そんなことよりも、佐野は生きてまた外に出られたことに歓喜していた。

 

走り方もフラフラでたどたどしく逃げている途中、ふとガラスに写った現在の自分の姿を見て、まるで死にかけの老人みたいな様相に言葉を無くした。

まじまじと見つめて驚愕するが、今度は沸々と怒りが湧いてきた。

 

夫婦への怒りを滲ませながらすぐ近くの民家に行き、助けてもらおうとするが、チャイムを押してもドアを叩いても誰も出てこず、今度は不在に対する理不尽な怒りが湧いてくる。

著者名:本田優貴 引用元:ただ離婚してないだけ20話

 

 

諦めて次の家に向かうが、ほんのちょっとの距離の移動でも関節に激しい痛みが走る。

 

次の家も不在で、その次も不在で、通りに誰も歩いておらず、家の中からも人の気配がしないのをさすがに不気味に感じる。

 

なぜ誰もいないのか?

せっかく地獄から逃げ出したのに、クラクラする頭で助けを求めているのに、なぜか人がいない。

 

まるで町全体で神隠しが起こったような雰囲気だった。

著者名:本田優貴 引用元:ただ離婚してないだけ20話

 

 

しかし絶望しかけた直後、ゲームキャラの何かのコスプレをした若い女が二人通りかかった

 

佐野は呂律が回らない舌で助けを求めるが、今はコスプレイベントの真っ最中。

 

普段なら異様に見える佐野の姿を何かのコスプレだと勘違いした女の子たちはまるで驚かず、なんの真似だろうかと考えた。

そしてすぐゾンビ系のキャラだと思い込み、相当なクオリティの高さだと感心した。

著者名:本田優貴 引用元:ただ離婚してないだけ20話

 

 

直後、背後の気配に気づいて振り返ると、追いついてきた正隆が飛びかかろうとしていた

 

佐野が再び逃げようとした時にはもう女の子たちはおらず、あれだけ体格差のあった正隆にあっさり押し倒されてしまった。

 

どれほどの叫びを上げて抵抗したのか分からないが、近所の人間は外の異変に気付いた

 

何の騒ぎだと思って外を覗き込もうとする住人。

それより前に、身重の雪映も追いつき、布団を覆い被せた。

 

夫婦による共同作業で大して罪もないだろう男を包み、助けを呼ぶ叫びを封じ込めた

著者名:本田優貴 引用元:ただ離婚してないだけ20話

 

 

騒ぎに気づいた住人はベランダから外を覗いたが、その時にはもう3人の姿は消えていた。

 

正隆と雪映は息を合わせた連携で、また佐野を我が家に連れ戻していた。

 

 

感想

ただ離婚してないだけ19話20話でした。

何とか逃げ出せたものの、コスプレイベントとかち合ったこと、姿が変わり過ぎていたことが不運でしたね。

こうなったら、そろそろ佐野が始末されそうです。

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