フロート・オブ・ザ・リング
ちおちゃんは登校中にコンビ二に寄り、適当にお菓子を一つ掴み、安藤がいるレジに持って行き、昨日のメールで言ったことは本当なのか?と確かめた。
黙って会計を済ませた彼は、おもむろにレジ台の下の収納スペースから紙袋を一つ取りだし、彼女に中を検めさせた。
入っていたのは、ブラウンとブラックの層が折り重なったチョコレートケーキだった。
そう、賞味期限が近づき廃棄処分するやつなのだが、彼は職権を濫用してくすね、ちおちゃんの好感を得ようと画策したのである。
そして少しでも一緒にいたいと言う思いが、滑らかにイートインスペースへと誘う言葉を繰り出させていた。
生菓子なのもあって、すぐに食べるのは彼女もやぶさかではなく席に着き、仕事を放棄して彼は隣に座った。
そして見る。
凝視する。
とにかく彼女が小さく切り分けたケーキを小さなお口に入れようとしているところを一瞬も逃すまいと、目を見開いて見つめた。
著者名:川崎直孝 引用元:ちおちゃんの通学路7巻
すると、彼女はケーキをケースに戻し脱兎の如く逃げ出した。
だって、そんなに見られたら照れちゃうに決まってるじゃん!
著者名:川崎直孝 引用元:ちおちゃんの通学路7巻
彼は頬を赤らめた彼女の様子からして押し時だと判断し、仕事を放棄して後を追った。
バイクを引き起こすことはできなくとも、彼女の身体能力の高さは周知の事実で、ケーキが揺れないように両手で大事に持っていても、身軽さと足のバネを駆使して身長より高い柵の上に乗り、そこから公衆トイレか何かの屋根の上に腕を置き、その勢いのまま反転して転がり乗った。
そして目の前がマンションのベランダ部分で人目につくと分かるや否や、制服が汚れるのも構わず死角に転がり入り、満を辞してチョコレートケーキのケースを取った。
しかし、彼はしつこくそこまで這い上がってきた。
再び逃げる彼女。
電柱を伝って消防士のように地面に降り立つと、彼はジャンプ一つで着地。
まさにモンスターから逃げるリアル脱出イベントのように思えてきて彼女はテンションが上がり、笑顔が零れた。
著者名:川崎直孝 引用元:ちおちゃんの通学路7巻
それを見た彼もまたイケると勘違い。
そして彼女は相手の大柄パワータイプの弱点をつき、用水路に渡されたパイプを伝って向こう岸に渡り、そこでバイバイしてゆっくりケーキを食べようと思った。
著者名:川崎直孝 引用元:ちおちゃんの通学路7巻
しかし、グラつきながらもまだ追って来るので、そもそも何で追って来るの?と率直な疑問を投げかけた。
それはあなたが好きだから・・・と伝えたい。
想いを伝える絶好のチャンスだと思った彼は、パイプの中ほどで仁王立ちになって彼女から目を逸らさず、彼女の名前を呼んだ。
彼女はその堂々とし過ぎた姿が、なぜかカッコよく見えた。
著者名:川崎直孝 引用元:ちおちゃんの通学路7巻
そして、ついに数奇な出会いを果たして恋をした彼女に、一世一代の愛を告白した・・・のだが
感想
ちおちゃんの通学路7巻でした。
面白度☆8 薄さ度☆7
やっぱり老師とのイメチェン大作戦に比べると、まだまだ濃い方でしたね。
それはいいとして、告白の結果もちゃんと描かれているので、コミックを読んで確かめて欲しいと思います。
鉄板の安東や細川の他にも、クソ真面目な桃先輩がちおちゃんの家で遊んだり、7巻の表紙のエピソードも収録されています。
それは、いい話風に見せかけた後味の悪さがあります。