29話

天井が崩落しかけているのに気づいたミツルは、考えるより先に走り出していた。

 

あえなく天井は崩落してしまい、ココロ目掛けて落ちてきたが、飛び込んだミツルのおかげで直撃することはなかった。

 

ミツルはココロが無事か声をかけたその時、自分が彼女の一番柔らかい部分を掴んでいることに気づき、例えようもない感触に言葉を失った。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

ココロが衝撃でふらついている間にサッと離れたミツルは、動揺を気づかれないように明後日の方を向いてごまかす。

 

そして自業自得になりかけたことを注意すると、謝ってからお礼を言ってくれたココロの心からの感謝に、また照れてしまうのだった。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

彼女の手には、しっかりと母子手帳が握られ続けていた。

 

 

 

一方、二人を探していたヒロたちも、朽ち果てかけた町にいた。

 

ゾロメは相変わらず探検気分で廃墟の町に興奮し、ミクはそっけない態度を見せながらも好奇心を刺激されている。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

フトシはとにかくミツルのことは忘れてココロの心配だけし、一人やたらと焦っている。

 

真面目で落ち着いているイチゴとイクノは効率よく探すために手分けして探そうと建設的な提案をして動き出し、残されたヒロとゴローが必然的にコンビになった。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

ヒロとゴローは廃墟の一つに入り、ヒロはこの廃墟の町に感じていた違和感を話し出した。

 

この廃墟の町を見ていると、大人たちが住むハイテク地下都市より、自分たちが住むミストルティンに様子が近い。

 

だから、きっとミストルティンはこの町をモデルにして作られたんじゃないかと思った。

 

その推察を聞いたゴローも、確かにそう思えてきた。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

そんなことを言い出したヒロを、ゴローは見つめた。

 

そうして新しいものに興味を持って探求しようとする姿勢が、育成所にいた頃のヒロと重なって見えたのだ。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

お互いに成長し、もうヒロを特別に凄いと思うこともなくなっていった。

 

それはヒロが挫折を味わっていたからでもあるし、ゴローから無邪気な気持ちがなくなっていったからでもある。

 

ゴローの気持ちを知ったヒロも、なぜ自分がかつての自分に戻ろうとしているのか分からなかったが、胸の腫瘍がなくなったのと関係しているのは、何となく感じていた。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

あのヤドリギの光景が蘇ったからか、あれ以来頭の中がスッキリしていく感覚を味わっていた。

 

すると、また好奇心が止め処なく溢れてくるのが分かり、あの赤い肌をして角を生やした女の子が誰なのか知りたいと思った。

 

しかし、あの子を思い描いた途端、頭の中を何かが刺したような痛みが走った。

 

 

ゴローに声をかけられるがまたごまかし、笑顔を繕った。

著者名:矢吹健太朗 引用元:少年ジャンプ+

 

 

ただ、胸の腫瘍のように命を脅かしてくる感じはしない。

 

外的要因で痛みが走ったのではなく、自分自身が思い出すのを拒んでいるような、記憶の奥底に濃い靄が立ち込めている気がした。